
製作にあたっては、イメージに合わせてデザインを組み、あらゆるシチュエ―ションでの着用を想定して、打ち合わせを重ねていく。
それは、昔ながらの職人による手作業の時代でも、CADなどの最新技術を取り入れたいまでも変わらない。
ティアラを着ける場面は、皇居・宮殿での行事や両陛下主催の晩餐会のほかに、訪問した国での歓迎晩餐会や王族の結婚式で着用することもある。
どのような場面でも、頭にぴったりとはまり、女性皇族を美しく輝かせるのが職人の役目だ。
佳子さま、承子さまら若い世代や、久子さまなど妃殿下方のティアラの重さは、およそ150~180グラム。何十個ものダイヤモンドや真珠で装飾された重量感のある、皇后さまのティアラならば250グラムほどだという。
大切なのは、ご本人に負担がなく疲れなど感じない冠に仕上げることだという。
ティアラの大きさや宝石も「ご身位順」

ティアラによって重さが異なるのは、ある「慣習」によるものだと、大倉さんは説明する。
「皇后のティアラがもっとも大きく装飾のダイヤや真珠の数も多い。そして皇太子妃、宮妃とご身位の順に装飾も控えめになってゆきます」
宮家でも同じように宮妃が結婚した際に新調するティアラのグレードを頂点に、娘である内親王や女王方は、姉妹の順に高さも装飾も抑えてゆく。
そのため、皇室の正装が洋装となった明治期から大正、昭和、平成と年代を追うごとに新調する宝冠は控えめになってゆく。
たとえば、1930(昭和5)年に高松宮妃の喜久子さまが結婚の儀式で着用されていたティアラは、いまの宝冠と比べるとかなり大きく重厚感がある。
土台が分解できるつくりのティアラもある上に、女性皇族の髪型や装着する角度によって高さや大きさの印象はかなり変わってくるが、原則としてこうした「慣習」に沿ってつくられるのだという。
