プールではもう1つの新技術が導入されている。水中に設置された「ラップ・カウンター」というタブレットだ。これは、「800メートル」や「1500メートル」などの長距離水泳競技で、選手がこれまで泳いだラップの数(50メートル)を認識できるようにしたもの。ターンした際に触れるタッチバッドが自動的にカウントする。長距離を泳いでいると、ベテラン選手でもカウントがわからなくなることがあるといい、このカウンターがカウント数を知らせるわけだ。
ところで、水泳競技の中継でプールを移動する黄色い「WR(世界記録)」のラインはすでになじみになったが、これは2000年のシドニーオリンピックから利用されているもの。世界記録のスピードをラップごとに平均化してバーチャルに表示し、実際の選手のスピードと比較している。
もともとこの技術を生み出したのは、オラッド・ハイテック・システムズというイスラエルのテレビ撮影技術開発会社。同社は2015年にアメリカのエイビッド・テクノロジーに買収されている。簡単なしくみだが、スポーツの実況中継はちょっとした工夫で興奮度が増大するという好例だ。
●オリンピックならではの競技にも最新テクノロジーが導入される
テクノロジーは、競技ごとに考案されている点も面白い。
カヌー競技では、すべてのカヌーにGPS受信機を付けて、スクリーンで競技を正確に観られるようにしている。長距離に及ぶため、これまでは全貌を観るのが難しかったものだが、それがスタンドから観賞できるようになった。
またアーチェリーでは、的の背後にセンサーが設置され、0.2ミリの精度で矢の位置を測定できるようになった。人間のレフリーでは時間がかかり、精度にも差があったが、正確な結果が瞬時にわかるようになっている。
オリンピックのテクノロジーは、正確さやエキサイティングさを求めて開発されている。2020年の東京オリンピックでも、有用でワクワクするようなテクノロジーが登場するのを期待したい。