
社会に出て働いていると、自分の経験や知識不足を感じることもある。仕事が好きだからこそ、そして働き続けたいからこそ、学び直しのために大学院や専門学校に通う女性たちの話を聞いた。AERA 2024年12月23日号より。



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「京大の大学院なんて、無理やろな」
西岡亜矢子さん(52)は4年前、不安を抱えながら京大経営管理大学院の受験に臨んだ。それまでに歩んできた道のりからすると、高すぎる壁だと感じていたからだ。
短期大学を卒業後、全日空に入社した頃は「結婚したら寿退社」が当たり前の時代だった。客室乗務員として9年間働いた後に退社し、フリーランスのマナー講師をしながら33歳で結婚した。
2年後に離婚したのを機に個人事務所を設立。徐々にコンサルタント業に移行していった。でも法人化して顧客の幅が広がるにつれて「理論の部分が足りていない」と感じるようになったという。
調べてみると、京大経営管理大学院にMBAが取れる「サービス&ホスピタリティプログラム」があった。躊躇する気持ちもあったものの、結果は見事、合格。大学院生活が始まった。
入学後はお風呂に浸かりながら組織論の本を読んだり、オンラインで夜中まで同級生から統計を教えてもらったり。仕事も続けていたため「M1(修士1年目)のときは記憶がない」ほど必死の毎日だった。
それでも、知識を得るにつれて「まるでテトリスのように、自分に足りなかったパーツが埋まっていって、ざざざざっと落ちていく感覚。すごく楽しかった」と話す。
記憶力の衰えを感じたり、老眼で教科書が読みづらかったりすることはあっても、仕事の経験があるからこそ教員の話がすっと入ってきた。「この年で勉強して良かったな、と思います」
30代は元CAの余力で
コロナ禍だったので授業はほぼオンライン。キャンパスに行かないまま修了するのを避けたかったため、1年留年して2023年に大学院生活を終えた。
「30代の頃は『元CA』の余力で飛んでいたけど、余力で70歳までは飛び続けられない。仕事が大好きだし働き続けるために大学院に行ったので、この先バリバリ働こうと思っています」
これまでを振り返って、そう話す西岡さんは、同世代で大学院進学を迷っている人には強く勧めたいという。
「行ってしまったら、なんとでもなるような気がするんです」