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●一地方自治体首長の失態を 騒ぎたてたテレビ

 6月15日、東京都の舛添要一知事が、数々の疑惑を残したまま退場した。この問題、前知事の猪瀬直樹氏に続く「政治とカネ」のケジメが問われた事態だけに、収め方如何によっては参議院選挙に影響を及ぼすことになりかねず、その行方が注目された。

 ことは公費による知事の豪勢な海外出張が『週刊文春』で暴かれたことに端を発し、以後、知事の公私混同ぶりが次々に明るみに出た出来事である。なかでも極めつけは、千葉県木更津への家族旅行のホテル代を政治資金でまかなったことで、そのあまりにもセコい行為は世人を呆れさせた。この記事に最も敏感に反応したのは、テレビではワイドショーだ。それも至極当然で、舌鋒鋭い論客であり、社会保障にも詳しい政策通、加えてクリーンなイメージを売りに当選した知事が、とんでもない公私混同をしてのけたのだから、話題性に富む恰好のゴシップネタとして、連日、面白可笑しく伝えられることになった。おそらくはこれに煽られたところもあったのだろう。やがて東京都民の怒りが爆発。都議会与党の公明党までが不信任案上程の動きを見せるとテレビニュースも追随することになり、14日、15日には、すべての局の夜のニュースがトップ項目で30分余りにわたり事態を報じた。

 だが私はこのニュースのあり方に疑問を抱いた。たしかに舛添氏の振る舞いは目に余るし、許せない。納税者である東京都民が怒るのはもっともだし、糾弾されて当然だ。だがニュースまでが大きく扱うほどのことなのか。大阪で見ている身としては違和感を覚え「どうしてここまで騒ぐのか」と不思議に思えた。

 これは東京という地方自治体の首長の不始末で、参議院選挙に影響するかもしれぬことを除いては、東京ローカルの出来事である。にもかかわらず扱いがあんなに大きくなったのは、日本の首都の知事の不祥事だからに違いない。贅沢な海外出張ひとつをとっても、全国の自治体のなかで突出した巨額の予算をもつ東京だからこそできた話である。である以上、ニュースのべースにはせめて、東京のあり方を考える視点がほしかった。東京一極集中の現状をどう見るか、このままでいいのか、どう改めるか。そうした「東京論」も踏まえたうえで「辞めるのか、辞めさせられるのか」「議会の解散はあるのか」を報じる姿勢を望みたかった。

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