
5年に一度開催されるショパン国際ピアノコンクールの優勝者、ブルース・リウ。実はコンクールへの参加を直前まで迷っていたというその理由とは?AERA2024年12月23日号より。
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今年10月、フランクフルト放送交響楽団との共演のため来日したブルース・リウ。2021年に第18回ショパン国際ピアノコンクールで優勝し(第2位は反田恭平)、日本でも多くのファンがいる人気ピアニストだ。
仏パリで生まれ、その後カナダで育った。モントリオール音楽院でリチャード・レイモンドに師事したのち、ベトナム出身で日本在住経験もあるダン・タイ・ソン門下となる。音楽を始めたのは8歳から。趣味が15くらいあってピアノの練習に割く時間は1日10分くらいという、この世界では破格の少年だった。
スタインウェイでなく
フランクフルト響との共演では、ピアノもメジャーなスタインウェイではなくファツィオリを選び、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を明るく輝きのある音質で弾いて、聴衆から大きな声援が飛んだ。
「その時はその気分だったので(笑)。もともと祝祭的な曲ですし、コンサートは一回だけの勝負なのでエネルギーを伝えることを重視しています。一方アルバムで発表した『ウェイブス~フランス作品集』には3人の作曲家の作品を収めていますが、すべて同じピアノを使っています。でも音色やアクションを変えて作曲家の特徴を出すように工夫しました。録音では何度も録り直しをしますし、後から編集もできますから」
実はコンクールへの参加は最後まで迷っていたという。師のダン・タイ・ソンが第10回で優勝しているから自分も参加したのではないかと言われることもあるが、それは誤解だと語る。
「先生から参加を強制されたわけではありません。僕は幅広い作曲家の作品を勉強したかったので、コンクールのためにショパンだけに集中して練習することをためらっていたほど。ショパンは繊細でもろいところのある人なのに僕は外にどんどん出ていく積極的なタイプですから。先生には『どんな時でも自分を貫け』という教えを受けました」