そして「笑点」みたいなオバケ番組でハゲをネタにすると、あっという間にハゲが浸透していきます(主に中高年へ)。

 寄席の高座に上がるとき、初めて寄席に来たであろう観客の視線が私の頭に注がれるのがよくわかる。のぞむところだ。「見ろ、見ろ、見ろ! とくと見ろ! お前たちの大好きなハゲだぞ!」と思いながら座布団に座る。

 マクラを喋りながら頭をそっと触ると「クスクス……」と笑い声がかすかに聞こえてくる。「なにかおかしいですか?」と聞くとまた「クスクス……」。「おい! お前ら引っぱたくぞ!」と声を荒らげると「ははははっ!」。引っぱたくぞと予告してるのに笑うとはなにごとか。ハゲてるというだけで、すごんだところで所詮笑いになってしまうのです。

そう、今のところですよ

 事故的に「激しい◯◯」なんて言うと「わー!」という歓声。枕の流れで「私の好きなハーゲンダッツ」とたまたま言ったら爆笑されたときは、「あー、オレのハゲもここまできたか」と思いました。

 客席を見るとハゲた人も笑っているのが面白い。自分もハゲてるのに目の前のハゲを見て笑っている。そのハゲは自分もハゲてるということを一瞬忘れているのか、それとも自分をふくめたハゲというものを笑っているのか? 願わくは後者であればよいなと思います。

「他人のハゲ見て、我がハゲ笑え」
でいきたいものです。

 今のところ、まだハゲは笑える対象。……そう、今のところですよ。

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