
「コンビニ百里の道をゆく」は、ローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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今年は政治の世界で、「脱派閥」という言葉をよく聞きましたね。
ただ、派閥は政治の世界に限ったことではありません。「人が三人集まれば派閥ができる」と言われるように、職場でも学校でも「派閥のような形」が生まれるのはよくあることだと思います。
人は狩猟生活をしていた時代から、生き抜くために「集まる習性」があるのでしょう。「集まる」こと自体はまったく悪いことではない。でも、その中で自分の集団以外の他者を排除する、という状況が起きてくるとちょっと問題だということだと思います。
では逆に、「一匹狼」が望ましいのか。私はそうも言えない気がしています。人は社会の中で、必ず誰かと関わらないと生きていけません。たとえば「孤高の人」と称されるような作家の方がいたとしても、実際には編集者やデザイナー、校正者などいろんな人に支えられている。
「一匹狼」なんて言われている人ほど「おれは一匹狼だ」なんて自分で言わないのではないでしょうか。いろんな人に助けられていることを十分に理解したうえで、一人で集中して仕事をされている、ということだと思います。

ある方が、興味深い表現をされていました。「これからは、派閥じゃなくて『サークル』ですよ」と。
興味があったら誰でもいつでも入っていい。でも、他でいい話をしてるなと思ったらそこにも顔を出す。「お前、なんでそっちに顔出してるんだ」なんてことは誰も言わない。
もちろん、「一人でいたい」と思うときは、サークルに加わらなくてもいい。そこにあるのは「自由」なんです。
仕事でも、面白いと思うことがあったらどんどん挑戦する。副業の選択肢もあっていい。多様性の中で自由に行き来して自分らしさを見つけていく。社会がそんな方向に向かえばいいなと考えています。
※AERA 2024年12月16日号