『アクトアップ 警視庁暴力班』
朝日文庫より発売中
「え? 続きを書くんですか? 正気ですか?」
担当編集者のK氏から続編を打診されて、正直なところ驚きを隠せなかった。まさか、『警視庁暴力班』の続編を書くことになるとは、夢にも思わなかった。
一作目の『警視庁暴力班』はその名のとおり、警視庁の刑事が暴力に依って事件を解決するという筋だ。この説明を書いていて、元も子もないと思ったが、そう説明するしかない。
僕がこれまで上梓してきた小説は、緻密に計算したミステリー作品が多く、個人的にそれを売りにしている。しかし、刑事が暴力に頼って、しかも、在日アメリカ軍の兵士と競って連続殺人犯を捜すという荒唐無稽なストーリーの『警視庁暴力班』は、まったくの異色作だった。
「いつも難しく考えていたら肩が凝るでしょ!」と思って書いた作品だったが、それが、なかなか好評だったらしい。
僕はストレスを溜めるタイプの人間なので、日常において「常識なんてクソくらえ!」と思うことは多々あれど、その常識に囚われて粛々と生きている。苛立っても、ぶっ飛んだ行動に出ることはない。
そのため『警視庁暴力班』は、僕自身のストレスを代わりに解消してくれる面々を揃えて、大立ち回りを演じてもらっている。中でも特に気に入っているのが、司馬というキャラクターだ。元ラガーマンで常識破りの司馬有生は、二〇一九年のラグビーワールドカップの熱狂から生まれた。
ラグビーは相手にぶつかり、倒れて前に進む。接触が当たり前で、流血も想定内。もちろん、厳格なルールの下での競技だが、僕の目にはとても新鮮に映った。そして、血を流しても必死になって前に進もうとする雄姿を見て『警視庁暴力班』の骨子ができたのだ。
先ほど、緻密な作品を売りにしていると書いたが、『警視庁暴力班』が大雑把というわけではない。しっかりとしたミステリーではある。しかし、そんなものが霞んでしまうくらい、ぶっ飛んでいる。
元ラガーマンのキャラクターのほかに、元レスリング選手、元プロレスラー、元力士と、体力自慢を揃えた。彼らが暴力団と響きの似た暴力班に集められ、凶悪犯罪に立ち向かう。それを束ねる班長が、暴力に縁のない主人公である北森優一だ。この文章を読まれている方は、ほぼ例外なく北森側のタイプだと思うし、僕自身も北森に近い。どうしてそんな男が暴力班の面倒を見ることになったかは、本書を読んでいただけると嬉しい。でも、ここで言ってしまおう。北森は警視庁を追われる立場で、それゆえに、猛獣使いをやらされている。