
企業や自治体で仕事と家庭の両立支援が進むなか、孫のために休暇を取れる制度が広がっている。具体的にどのようなものなのか。「孫休暇」を設ける九州電力を取材した。AERA 2024年11月25日号より。
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仕事一筋だった“昭和の男”が、孫のために休みを取った。
九州電力・宮崎支店都城営業センター長の吉村啓悟さん(51)は今年10月、長女(24)が第2子を出産した翌日から、孫のための育児休暇「孫育休暇」を3日間取った。
長女は産休育休のために名古屋市から宮崎に里帰りし、吉村さんの自宅近くのアパートに仮住まい中。吉村さんの妻はアパートに通い、長女と生まれたばかりの第2子をサポートしている。孫休暇中は毎日、吉村さんは第1子の孫(1)を自宅に連れて帰った。階段を上り下りして遊ぶのに付き合い、散歩に連れていき、風呂に入れた。
妻に任せきりだった
ある日の昼過ぎ、孫をベビーカーに乗せて歩いているとき、感じ入るものがあった。
孫誕生の1カ月前から「孫が生まれるから、休みを取る」とグループのメンバーに宣言して、仕事を調整したうえで取った休暇だ。
「宣言したことで、何か意識が変わったのかもしれません」
いつもの有給休暇を使って孫の世話をすることはできる。でも、この3日間は「孫や娘のため」という名目があった。今日はゴルフの打ちっぱなしに行くんじゃない。孫と接する時間を大事にしよう。使命感のようなものが湧いてきた。
長女が小さかった頃、福岡の本店に配属されたばかりだった。
「仕事優先の、昭和の男でした」
夜の付き合いもあり、子どもたちの世話は妻に任せきりだった。単身赴任生活も14年続いた。
「妻に申し訳ないとずっと思っていました。孫が生まれると聞いたときに、そのことを思い出して制度を利用しました」
孫休暇後、平日の夕方や週末には、遊びにきた孫たちの相手をしている。日々会うので、孫から「誰?」という顔をされることはなくなった。「おじいちゃん」だと認識されている。
「孫が私を見ると、笑ってくれるんです。たまらないです」