中嶋さんのもとに届いた殺害予告のダイレクトメール

ひきこもり時代、「タイタニック」に救われた

 中嶋さんは当時、精神的に追い込まれ、数日間SNSを見られなくなった。しかし、「これは私とイオンシネマの問題なのだから当事者同士で解決しなければ」と決意。イオンシネマに連絡し、シアタス調布の支配人など担当者3人との話し合いの場が設けられた。

 担当者によると、車椅子を持ち上げる介助は安全上のリスクがあるため以後は対応できないが、一部の映画がグランシアターでしか上映されていない運用を見直したり、グランシアターをバリアフリー仕様にしたりと、対策を検討するという。中嶋さんは騒動を招いたことを謝りつつ、「ありがとうございます。今後もシアタス調布を利用させて下さい」と応じ、円満解決となった。

 しかし、SNSの炎上ムードは一向に収まらなかった。話し合いの翌週、早速シアタス調布で「オッペンハイマー」を鑑賞したことをXで報告すると、「まだ行くのか」「懲りない奴」などと大量のアンチコメントがついた。イオンシネマのWebサイトに「弊社スタッフが車いすやお身体を持ち上げる対応は控えさせていただきます」と注意書きが掲載されると、「お前のせいで介助してもらえなくなった」などと再びバッシングされた。

 それでも中嶋さんはインフルエンサーとしてSNSでの発信をやめず、むしろ映画にまつわる内容を以前より積極的に投稿するようにしたという。

「誹謗中傷に負けたくなかったのもありますが、なにより、映画が大好きな人間であることを知ってほしくて。私は子どものころ引きこもりでしたが、『タイタニック』を見て映画に関する仕事に就く夢を持ちました。そしてアメリカの大学の映画学部で学び、帰国後はFOXネットワークスで映像エディターとして働きました。本気で映画が好きだからこそ、誰もが楽しめる映画館になってほしいと強く願っているんです」(中嶋さん)

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「ドラマチックな展開」に涙