仕事、健康、子育て、お金、人間関係、親の介護、老後のこと......30代半ばから50代ぐらいにかけてのミドルエイジは、複数の問題が同時に降りかかってくる年代。複雑すぎてこんがらがりそうな毎日に、私も「もうええでしょう!」と投げ出したくなることもしばしばです。
そこで今回ご紹介するのは、そんなモヤモヤを解決する助けになるかもしれない書籍。音声プラットフォーム「Voicy」のパーソナリティやヨガインストラクターとして活動している尾石 晴さんの初エッセイ『からまる毎日のほぐし方』です。
実は尾石さん自身、こうした問題に直面している当事者だったといいます。しかし、そこに転機をもたらしたのは、意外なことに"片づけ"でした。片づけの資格取得を進める中で、「すべて出す→選ぶ→戻す→維持する このシンプルなステップは、目に見えない"思考"や"感情"にも効果的で、私の人生のあらゆる場面の"からまり"をほぐしてくれた」(同書より)そうです。尾石さんの思考や体験、感じたことなどがシェアされている同書は、「こういった考え方もある」とさまざまな気づきを与えてくれます。
たとえば、女性が直面し得る問題の1つが出産。子どもを持つかどうかに始まり、1人目をいつ産むか、2人目をいつ産むかなどなど......。「女性であることにからまる」の章で、尾石さんは仕事と不妊治療のスケジュールをパズルのようにやりくりしながら、からまっていたころを振り返ります。
「身体的変化と精神的変化を同時に味わう側である女性が、キャリアやライフプラン、その後に続く子育てのことも考えると、盛大にからまってしまうのはしょうがないことだ」(同書より)
尾石さんの言葉には、共感する女性も多いのではないでしょうか。そして私たちは、考え抜いて選んだとしても、選ばなかったほうの選択肢をふとした瞬間に思い出すこともあります。けれど尾石さんは、「人生はトレードオフ」だと記します。
「あなたが手に握りしめている選んだカードもほら、表と裏がある。産むか産まないか、どっちを選んでもいい。もちろん、選びたくても選べなかった人もいるだろう。大事なのは、その手元で握りしめているカードの、どの面を見るかだ。選択したそれが、私やあなたの生き方となる。カードの是非を考えるのではなく、自分が選んだカードの明るい一面を見る目を持つほうが、ずっと良い人生との向き合い方になる」(同書より)
すべてを選ぶことはできない私たちの人生。自分がいま手にしているカードの明るい面に目を向けて、それを大切にしていくのは、日々のからまりから抜け出して生きるための1つのヒントとなりそうです。
ほかにも「疲れやすさにからまる」「キャリアと生き方にからまる」「収支と支出のバランスにからまる」「歳を重ねる不安にからまる」などの悩みに向き合い、どうすれば自分らしく乗り越えていけるかについて記されている同書。ミドルエイジが抱える"からまり"を、じんわりと温かく解きほぐしてくれる一冊です。
[文・鷺ノ宮やよい]