松本人志氏の性加害疑惑を報じた昨年12月27日発売の「週刊文春」

 被告人質問によれば、男が妻に離婚したいと告げると、「本当に言っているの? 不倫して借金を作って私の口座の金を無断で返済に充てたりしたあなたにそれを言う権利も資格もない。これまで一緒にいてくれただけありがたいと思え」と言われたことに腹を立て殺害したという。さらにその一部始終を見ていた1歳の娘も殺害したという。私はこの事件自体を知らなかったが(もしかしたら忘れてしまっていただけかもしれない。あまりにも、女や子供が殺されている社会だから)、知っている、こんな男を私は知っている……という気持ちが抑えられない。いろんなことが、点で起きるいろんなことが、こういう事件に直面するたびに一気に面となって迫ってくるように感じるのだ。

 日本社会、まだまだここは男社会、強烈な男様社会である。四方八方、「男様!」と書かれた面が女たちの人生を囲んでいるかのような社会だ。男社会は、男の暴力や男の暴言に寛容である。男社会は、女の怒りや女の裏切りを全力で潰しにかかる。男社会は、男を守る。男社会は、女を見捨てる。男社会は笑いながら女に暴力を振るい、楽しそうに女に暴言を吐く。

 それがずっと許されてきたので、男自身、それの何が悪いのか実はよくわかっていなかったりするのだ。だから、女が怒るとびっくりする。女が牙を剥くと恨みをつのらせる。賢く臆病な女たちは、男を怒らせないことに細心の注意を払いながら、はりついた笑顔で生きる道を選ぶ。それはとても苦しいこと。だけど男を怖がらせたら自分の身が危険だ。

 そんな女の苦しさなど、もう見たくない。殺される女を見たくない。怯える女を見たくない。いったいなぜ、この国は、女の声にここまで耳を塞ぐのだろうか。

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