もう一つ忘れてはいけないのは、多くの新興国は信頼度の高い通貨を持ち合わせていないので、ドル建てで海外から資金調達をする傾向があるということです。ドル建てで借り入れを行っているがドルの収入源を持たない国や企業にとって、ドル高とドル金利の上昇は、彼らの債務負担を膨らませ、利息コストを増加させるのは自明です。

 つまり、アメリカの高金利とドル高の組み合わせは、世界の他の地域への投資を魅力的でなくします。このような局面では投資マネーは新興国から流出する傾向があります。もちろん、過去のアジア金融危機の時と違い、ASEANやBRICS諸国を中心に潤沢な外貨を持ち合わせてはいます。

 とはいえ、これ以上のドル高傾向は、世界的に株式市場や実体経済のリスクになりうるのは押さえておいて損はないでしょう。

再びぶり返すリスク

 ここまでは、トランプ大統領誕生でインフレになることを前提に考察しましたが、そのストーリーも不確実性が伴います。というのも、彼は大統領就任でロシア・ウクライナ戦争を1日で終わらせると豪語しています。戦争終結は、石油などの資源価格の沈静化に影響すると考えられ、米国だけでなく世界中のインフレを抑制するかもしれません。その場合、米ドル高はどこまで続くでしょうか?

 ただし、その場合もインフレは一時的には収まるものの、再びぶり返すリスクはあると筆者は考えています。戦争が終結する場合は、ロシアが占領しているウクライナ領土をロシアに引き渡すことで収まると考えられます。こうなった場合、「常任理事国は侵略戦争をしてもお咎めなし」という前例と認識される可能性があります。そうなれば、中国はどんな行動をするのか?

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「遠くの戦争は買い」