食事は、ちゃんとした食事がとれるのは1日1食だけ。朝はエジプトから持ち込んだ決して美味しいとは言えないエナジーバー(栄養補助食品)を食べた。何も食べない日もあった。昼食はもちろん無し、夜は少なめだけど割とちゃんと食べられた。

 ちゃんと食べられたといっても、エジプトから持ち込んだ缶詰や、現地スタッフが現地で調達してくれたパラパラのライスと乾燥したお肉など。これまでの海外派遣では通常ガスや電気など調理する手段があったけれど、今回のガザにはなくて、ちょっとした温めなども全くできなかったので冷たい食事しかなかった。ガザから退避した後、エジプトで久しぶりに温かい食事をとったときには、ほんとうに感動した。私を含め、チーム全員みるみるやせていった。

 体を洗うのは2~3日に1度。最初はちょろちょろの水が蛇口から出たが後半は水が出なくなり、水はポリタンクに貯めてあるものを大事に使った。バケツ1杯の水で、使用済みペットボトルに水をくんで体を洗った。温水なんて夢のまた夢。だんだんと気温も下がり冷たい水が寒い日が多かった。また日もだんだんと短くなり、暗闇を懐中電灯で照らしてブルブル震えながら身体を洗った。今でも温かいシャワーやお風呂に入ると罪悪感を覚える。

 私はかなりの近眼と乱視で度の強いコンタクトレンズを使用している。1日使い捨てのワンデーコンタクトレンズで、3週間の派遣予定にプラス1週間分余裕をみて持ってきたが、ガザ入りまで2週間かかってしまい、このままでは足りなくなるぞ、と気づいた。メガネは持ってきていたが、ド近眼なのでレンズが分厚く、それでもよく見えない。医療行為も難しくなってしまう。コンタクトレンズがなくなってしまいそうになっていた。そこで、途中から、ワンデーコンタクトを2日連続で着けることにした。夜、寝る前にコンタクトレンズを外すと液が入ったケースに戻し、ふたをしてテープを貼り、翌朝もう一度装着。なんとか足りた。

AERAオンライン限定記事

中嶋優子(なかじま・ゆうこ)/東京都出身。東京都立国際高校、札幌医科大学卒業。日本と米国の医師免許を持つ。日本で麻酔科医として勤務の後2010年に渡米、救急医療の研修を開始。2014年に米国救急専門医取得、2017年には日本人として初めて米国プレホスピタル・災害医療専門医を取得。国境なき医師団には2009年に登録。2010年に初めての海外派遣でナイジェリアで活動し、その後もパキスタン、シリア、南スーダン、イエメン、シリア、イラクで活動。2023年11~12月にかけてパレスチナ自治区ガザ地区で活動した。2017年から米アトランタ・エモリー大学救急部の助教授を務め、24年9月からは准教授職に。

暮らしとモノ班 for promotion
大人向けになった!「プラレール リアルクラス」は飾って良し、走らせて良しの再現度にときめく