ガザ地区にあるナセル病院の救急で腹部超音波検査を行う研修医(右)と中嶋優子医師(中央)、携帯型エコーは中嶋さんが持ち込み病院に置いてきた=2023年11月24日(写真 国境なき医師団提供)
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 昨年10月7日、イスラム組織ハマスによる攻撃への報復として、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃が始まって1年。いまも攻撃は続き、これまでに4万人を超える犠牲者が出ている。さらに、食糧不足や衛生面の悪化など人びとの生活状況は深刻だ。昨年10月の攻撃後に届いた派遣要請に応じ、11~12月にガザに入った国境なき医師団(MSF)日本の会長で救急医・麻酔科医の中嶋優子さんは、帰任後も取材や講演等で現地の状況を証言し、停戦を訴え続けている。当時の日記をもとに、全10回の連載で現地の状況を伝える。

【写真】ガザでは3日に一度ペットボトルに水をくんで体を洗い…… 帰国した今も温かいシャワーに罪悪感を覚えてしまう

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 ガザでの任務期間中に誕生日を迎えた。

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《11月22日の日記から》

 今日は私の誕生日! もちろん家族から嬉しいメールが入っていたけど、朝からチームのみんながおめでとうハグしてくれたりしてちょっと嬉しかった。

 今日はPHC(MSF がサポートしているプライマリーケアクリニック)に行ってみた。すごく混んでて、でもMoH(ガザの保健省)が無料でいろいろ提供してて感心した。子どもの腕の周囲測ったりしたけどみんな栄養状態はまぁまぁ良かった。食べ物はもともとすごい安いらしく、子どもも栄養は良いみたい。あとはER(救急救命室)は点滴室として機能していて、脱水の子どもとかが点滴を受けてた。

「うちが爆撃されてさー」って明るくビデオを見せてくれたドクター。現地のナースが「You need to smile」って言ってて、笑顔じゃなきゃやってらんない、って感じなのかなぁと思った。そしたら死ぬってことは神様が決めた時期に死ぬだけで、苦しみもない世界に行けるからいいことだけど残されたほうは少し寂しいね、くらいな感じだった。でも私たちは絶対勝つ、残るか死ぬか、みたいなことも言っていた。

 あと、何回か一般のパレスチナ人から聞いたけど、この戦争はイスラエルと同じくらい、もしくはもっとアメリカのせいになってる。

(略)

 プロジェクト・コーディネーター(チームのリーダー)からのブリーフィング……北部ではMSFも狙われていてやばいらしい。

 明後日から4日間停戦とのことだけど、今日はすごい爆撃が多い。

 みんな明るいけど、どんどん老けていってる(やつれている?)気がする。特に男子。

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