判決は、記事の内容は「真実ではない」と名誉毀損を認め、東スポに165万円の賠償を命じる一方、ヤフーの賠償責任を否定した。山本弁護士は言う。

「裁判の大きなポイントは『プロバイダ責任制限法』(プロ責法)で規定されている『発信者』にヤフーが該当するかどうかでした。私たちが注目しているのは、ヤフーはコメント欄の設置なども含め、『記事の提示の仕方に関与している』と判示されたことです」

 プロ責法は、ネット上の情報で権利侵害があった場合、主に電子掲示板やSNSなどの運営者(プロバイダ)が提供するサービスを利用する情報発信者に適用されるルール。裁判で焦点になったのは、プロバイダの免責を定めた同法の3条1項をめぐる判断だ。

発信者としての該当性

 原告側は、ヤフーは「記事を作成する会社との共同事業として主体的かつ積極的に記事配信を行っていると評価できる」ことから、プロ責法上の「発信者」に当たり、3条1項は適用されない、と訴えた。

 これに対し、ヤフー側は「新聞社や通信社が制作した記事を自ら管理サーバーに入稿すると自動的に記事が配信される仕組み」のため、発信者に該当せず免責条項が適用される、と主張した。

 判決は、記事が新聞社の操作だけで自動掲載された経緯を踏まえ、ヤフーは「入稿に関与していない」と判断。プロ責法の免責条項を適用し、ヤフーの責任を否定した。

 一方で、一部の記事についてはヤフー側が「トピックス」(ヤフトピ)としてトップページに掲載したり、アルゴリズムによる「おすすめ記事」や「アクセスランキング」を表示したり、コメント欄を設置するなどして「記事の提示の仕方に関与している」と指摘。ただ、今回問題になった記事については、ヤフトピに掲載されておらず、おすすめ記事やアクセスランキング上位の記事としても掲載されていなかったため、「ヤフーの意思により流通過程に置かれたと評価するのは困難」とした。

※AERA4月17日号から
※AERA4月17日号から

 受け止めようによっては、ヤフトピなどに掲載された記事に問題があればヤフーの責任も問われかねない、と読むこともできる内容だ。

 山本弁護士は「プロ責法も踏まえ配信会社であるヤフーの責任について、裁判所がここまで踏み込んで検討したケースは初めてではないか」と評価する一方で、こうも言う。

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「ヤフトピ」の影響力は?