音楽とセックスは似ている
この関係性によって、裕子さんから人間臭さが立ち現れてきたということなのだろう。
「でも、壊す作業ってほかに何かあったのかな? 自分の中では、もうそれしかなかったから。音楽とセックスっていうのは、ちょっと似ている部分があると思うんですよね。没頭するっていうか、動物的になるみたいな。私はそこと向き合っているぞ、みたいな。でも、これって悪い女のたわごとですよね。いい人をやめちゃったでしょう、私。フフフ」
それでも、離婚して一緒になるつもりはないという。
「お互いの家庭は絶対に壊さないというのが条件です。別に私、音楽で生計を立てている男性と結婚しようとは思わない。そんなリスキーな人と一緒になるのは嫌ですね。お金は大事です」
もしも音楽をやっていなかったら
彼女は今でも、家に帰ればいい妻を演じている。しっかり蓋を閉めているので、夫が妻の変化に気づくことはないという。
「もしも音楽をやっていなかったら、私は一生、素敵な奥さんのままで死んでいっていたでしょうね」
ブラックな面を話す裕子さんは、どこか誇らしげだった。
人は自分を押し殺したままでは生きていけないのだなということを、私はしみじみ感じた。