いい母、いい妻として生きてきた女性が自分を壊し始めた理由とは(撮影/インベカヲリ)
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 現代日本に生きる女性たちは、いま、何を考え、感じ、何と向き合っているのか――。インベカヲリ☆さんが出会った女性たちの近況とホンネに迫ります。

【写真】きっかけは大げんか。「蓋がバンッ!と開いた」と語る女性

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私のブラックな面をお話しします

「今日はインベさんに、私のブラックな面をお話ししたいんですよね」

 待ち合わせに現れた裕子さん(50代後半/仮名)は、会うなりそう言ってニッコリと笑った。主婦である裕子さんは、サラリーマンの夫と社会人の娘と暮らしている。

 子育てを終えた今は音楽活動をしているらしく、細身で美しく、肌はつややかで、目はキラキラしていて、いかにも充実した日々を送っていそうな雰囲気があった。

 そんな彼女に一体、どんなブラックな面があるのだろう。

「私は子育てをする中で、いい人にならなきゃ、いい母にならなきゃ、いい妻にならなきゃ、そう思って生きてきたんですね」

 話は、結婚当初のことから始まった。

いつも笑顔でいられるように

 きっかけは、友人に誘われて参加したセミナー。“笑顔と言葉で人生が変わる”という話に感銘を受けた裕子さんは、その考え方を学ぶためにセミナーを受講するようになったという。

「言霊ってあるじゃないですか。マイナスなことを言うと、マイナスに引っ張られる。だからプラスの言葉を使うようにする。あとは、エレガントでいるための仕草とか、いつも笑顔でいるための方法を学んで、目標を立てて理想の自分を想像するということを続けてきました」

 そのおかげで、実際に人間関係は良好だったという。

「私、人を嫌いになることはいけないことだと思っていたから、苦手な人ともうまく付き合っていたんですよ。この人腹立つなあと思っても、その人のいいところを見つけて紙に書く。そうすると、その人もいい人なんだと思えてくる。相手にも事情があるだろうから、幸せを願ってあげようって。バカですよね~。でも、そうするとイライラがなくなるんです。そういう訓練をしていたから、当時は本当に嫌いな人がいなかった」

「いい奥さん」を演じています!

 ということは、よほど、“いい人”でいることがうまかったのだろう。

「はい。みんな、私に会うと『元気になる』とか言ってくれましたから」

 では、夫や子どもの前ではどうなのか。

「私は、家庭でも『いい奥さん』を演じています!」

 あまりにキッパリと言うので驚いてしまった。

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