「皇族方は、申し訳なさそうに招待者に視線を送りながらも短い会釈やひと言、ふた言交わして、急ぎ足で進んで行かれる。予定の退出時間はとうに過ぎており、皇族方のご様子もややせわし気でした」(報道関係者)
そうしたなかで会場の注目を集めていたのが、高円宮妃の久子さまと長女の承子さまだ。
おふたりの並び順は、皇族方の最後尾。懇談も最後になるため、メダリストらとの懇談時間がほとんどないままに、会場の退出時刻が迫っていたようだ。
「毎度、恒例の……」
久子さまは、ほほ笑みつつ招待者らへこう声をかけながら、歩を進める。そのとき、招待者の列の後方に、フェンシングの選手らの姿を見つけた久子さまは、すこし離れた場所でメダリストらと会話を始めようとしていた、承子さまへ声をかけた。
「承子さん、承子!」と久子さま
「お話の途中に失礼。承子さん、承子!」
気づいた承子さまが、久子さまの方へふり向く。
「こちらにフェンシングの皆さんがいますよ」
久子さまの夫、故・高円宮さまは「スポーツの宮さま」と呼ばれ、サッカーをはじめ、さまざまなスポーツの振興に尽力した皇族。その遺志を継ぎ、久子さまは、サッカーやハンドボール、バドミントン、フェンシングなど10を超える競技団体の名誉総裁を務めている。
承子さまに呼びかけたものの、退出時刻は、とうに過ぎている。
「母がお世話になっています!」
承子さまは、フェンシングの選手らに向かって大きな声であいさつをすると、ぺこりと頭を下げた。
残されたギリギリの時間まで、招待客に礼をつくそうとするおふたりを、周囲のひとたちは、にこやかに見つめていた。