――誰でも使える割引金券から、たくさんお買い物をしてくれた方により良いサービスを提供する、いい意味での選択と集中ですね。お箸もかなり質の良いものを用意されたと伺っています。
「お買い物券をお渡しするよりは、日本らしさを感じるデザインにしたお箸をお渡しすることで、お客さまの中でいい思い出にしていただきたいという思いで、イオンモールからのささやかなプレゼントとして、お渡しする形になりました」
――この箸のような貴重な工芸品は、インターネット上での口コミ(ソーシャル)対策としても大きく拡散しそうですし、さらにそれが検索される、いい循環を生みそうですね。
インバウンド対策において、今のトレンドを把握し「顧客が本当に求めるサービス」を提供しつづけているイオンモール。そして、インターネットの検索エンジンから得られたデータも、サービスの提供を行う上で非常に役立っているのだという。
「良いモールを作っていく上で、インターネット検索のデータは非常に重要な役割を担っています。そこからは我々が想像し得なかった需要などを導き出すことができます。例えば、地名の検索データなどは、モールにおけるインバウンド対応を地方に展開していく上ではとても役立っています。またトレンドを追いかけるという意味でも、検索データは非常に価値があります。以前のインバウンドの買い物というのは、電化製品や日本色の強い商品をたくさん買っていく傾向がありましたが、だんだん日用品にシフトしている傾向にあります」
――具体的にどのような商品が購入されているのですが?
「それこそ最近は、洋服やバッグなどファッション関係の商品だったり、サービスでいうと先ほども申し上げたネイルサロンなど、日本人のリアルなファッションを取り入れたいというお客さまが増えています。トレンド自体もリアルな日本を感じたいという方向にシフトしているのは間違いないのだろうと思います」
――なるほど、伝統的な日本がある一方でリアルな日本も体験したいということですね。お客さまにサービスを展開する上においてもデータの活用は欠かせなくなっていると。
「そうですね。良いモールを作っていく上では、お客さまへの対応、現場からのフィードバックに対する対策、そしてトレンドを追いかけていくことが必要だと思っています。そういった意味でも、運用のルールを定めるだけでなく、さまざまな声に応えていく必要があるのだと考えています」
――インバウンド用のホームページは、単なる日本語ページの翻訳ではなく、中国人旅行者向けコンテンツ、英語は英語圏旅行者向けコンテンツと言語別に分けていらっしゃいます。海外のまだ見ぬお客さまに対しても情報発信を大切にしている事がすごく伝わってきます。
インバウンド向けショッピングの最前線に立つイオンモール。その現場から見えてきたのは、効果的なインバウンド対策には、言語の対応だけでなくデータをもとにしたマーケティングが必要ということだ。その原点は、各地域の一員として地域貢献を果たすという思い、訪日外国人に日本にまた来たいと思ってもらいたいという思いがあった。
今後、インバウンドの対策を行っていくうえで重要になってくるのが、トレンドのデータだ。次回記事では、中国でも人気を博している「あの企業」のインバウンド対策についてレポートする。