「菊栂」紋と美しい流水文様の着物
この日の佳子さまがお召しだったのは、未婚の女性の第一礼装である本振り袖に三つ紋を入れた格式の高い装い。秋篠宮家の家紋は、十四弁の菊花と秋篠宮さまのお印である栂(つが)の枝葉を四つずつ円形に連ねた意匠。「菊栂(きくつが)」とも呼ばれる菊花紋だ。
本振袖は、緑がかった薄い水色の「藍白(あいじろ)」を主役に、黄と白の混じった「鳥の子」色が裾にひろがる優しい色味。
もともとは、姉の小室眞子さんがパラグアイ訪問でお召しになっていた着物を、佳子さまが受け継いだ。佳子さまが29歳の誕生日に公開された写真や映像でも、紅葉を背景に同じ着物をお召しになっていた。
佳子さまの振袖について、呉服業界にかかわる人物は「日本画のように繊細で美しい友禅染の振袖」と話す。その振袖には、緻密な技巧が詰まっているという。
水を意匠化した流水文様。その水辺に咲くようにあしらわれた四季の草花。
主役となる菊や若松、笹などの意匠は、金銀や絹糸による日本刺繍や本金箔(ほんきんぱく)で華麗に装飾され、そのうしろには紫のスミレが可憐に添えられている。
光の加減によって、友禅染の草花や金箔が絹の布地から静かに浮かびあがるように感じられることもあるという。
「身体に絹地を巻きつけて着る着物は、立体的な曲線で図案の美しさを捉えるものです」
と前出の関係者。何より大切なのは、主役は図柄ではなく、お召しになる方を引き立たせることだという。
朝まで降っていた雨はやみ、好天に恵まれた今回の園遊会。
皇后雅子さまや愛子さま、そして秋篠宮家の紀子さまや佳子さまら女性皇族の色彩豊かな和装は赤坂御苑の緑に美しく映え、招待者をもてなした。
(AERA dot.編集部・永井貴子)