そのうちかじるのをやめて、舌先で甘じょっぺえのを舐めてみた。頭の中に電流が走る。舌の動きが止まらない。ペロペロペロペロ……。おばあちゃんのぽたぽた焼を舐め回す。味がなくなったらふにゃふにゃになった煎を食べる。味がなくなったとはいえ、まだうっすら残っている薄甘じょっぱさは楽しめる。

 気がつくと友だちがまたファミコンをしていた。ソフトはサンソフトの「アトランチスの謎」。冒険家が巨大な謎の島、アトランチスを冒険するスーパーマリオっぽい横スクロールのゲーム。上手い。ドンドン進んでいく。観ているだけで楽しい。そしてぽたぽた焼も美味い。なんて美味いんだ。友だちはファミコンが上手い。なんて上手いんだ。食い意地が張ってるくせに手先は器用。

「アトランチス、やってみ」

オレはまだ2枚しか食べていない

 コントローラーを渡され、やったことのないゲームをやることになった。スタートして5秒で主人公が死んだ。コウモリの糞に当たったら石になって死んだ。ウンコに当たって死ぬようなひ弱なヤツは冒険なんかするな!! そんな虚弱体質でなんで「アトランチスの謎」が解けると思ったんだよ!! お前は自己評価が高過ぎる!! と後々になって憤った。

 「クソつまんねーなー、これ」と言いながらぽたぽた焼の袋に手を伸ばすと中は空だった。なぜだ? オレはまだ2枚(小袋一袋)しか食べていないのに!? 

「何枚食ったんだよ!」と私は友だちに聞いた。

「さぁ(笑)」

「さぁ?」

「いーだろ? だってこれ、俺んちのぽたぽた焼だし」

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