「すげー、美味いよ。これ!」。知るか! オレのカールを盗んだくせによくぬけぬけとそんなことが言えるな。私の埼玉の伯父さんがおまわりさんなので、帰ったら親に頼んでコイツを逮捕してもらおうと心に決めた。

「これ甘じょっぱいんだぜ。めちゃ美味いんだ! すげーサイコーだよ!」。語彙がひどい。第一、こんな子どもだましみたいなばばあのイラストの入った煎が美味いわけない。こんなものただの「黄ばんだソフトサラダ」だろ。このカール泥棒め。

「食ってみ! うめーから!」

 あんまりしつこく勧めるので「わかったよ……でもカール盗んだの謝れよな……」とブツクサ言いながら、小袋を開けて1枚口にしてみた。

「………なんだ、これ……めちゃ美味い、そして甘じょっぺぇ……サイコー……」

うめえ。うめえよ。

「だろ? いっぱい食べていいってさ! 食べようぜ!」と言いながら友だちはバリバリと「おばあちゃんのぽたぽた焼」を飲み物のように食べ始めた。相変わらず品のない食べ方だ。沢山あるのに何をそんなに慌てるのか。パッケージのイラストのばばあも「ゆっくり食べんしゃい」と言ってる(ように見える)だろが。

 私はもったいないのでじっくりと食べることにする。1枚目は初めての経験なので、ついついがっついてしまった。2枚目はもっとぽたぽた焼を味わってやろう。一口パリッと割って、かけらを口にふくむ。カールを食べる要領で、唾液で湿らせてみる。口の中にぽたぽた焼の甘じょっぺえヤツがドンドン広がっていく。うめえ。うめえよ。もう一口、そしてもう一口。ゆっくりゆっくり甘じょっぺえのを楽しむのだ。

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スタートして5秒で主人公が死んだ