「CDという新しい音楽メディアが登場し、このあと一気に浸透していきます。高価だった家庭用VHSとベータのビデオも普及し始めました。『スリラー』のビデオに関しては、人気バラエティー番組でお笑いタレントがそっくり真似するほど親しまれていました」

 さらにもうひとつ。

「おしゃれなイラストの表紙や付録のカセットレーベルが好評のFM雑誌が人気で、その番組表を見ながら好きな曲をエアチェックしてカセットテープに録音するという親しみ方の人気をさらに拡大させたのが、レンタルレコード店の拡大です。洋楽だけの話ではないですが、数百円でいろんなレコードに気軽に触れることができるようになりました」

 時はめぐる。近年、80年代の日本で生まれた「シティ・ポップ」がヨーロッパや韓国で注目され人気を集め、同じ時代のアイドル曲が気鋭のクリエイターにリミックスされるような現象も起こっているなど、“日本のエイティーズ”もあらためて注目される時代が訪れている。

 TikTokで過去の曲が突如として発掘され拡散、時を超えてヒットするような垣根のない時代。1984年、85年の曲が、突如としてタイムリープしてきたように世間に拡散され、煌びやかな空気をふりまいてくれるようなことだってあるかもしれない。

 音楽の回帰と歩調をあわせるように、80年代半ばの転換点のあの熱狂こそが今世界が求めているものなのだろうか。(ライター・太田サトル)

AERA 2024年11月4日号

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