インタビューに答える長井短さん(撮影・慎芝賢、ヘアメイク・小園ゆかり、スタイリング・Takashi)

「このシーンが書きたい」が出発点

――長井さんは演じる仕事以外にも、小説やエッセイの執筆にも精力的に向かわれていますね。今年2月には初の小説集『私は元気がありません』(朝日新聞出版)、7月には2冊目となる『ほどける骨折り球子』(河出書房新社)を出版されました。

 小説集はこれで2冊、エッセイ集(『内緒にしといて』晶文社)も1冊出しています。

――書くきっかけは、なんだったんでしょう。

 小説を書くようになったきっかけは、Webでコラム連載していたのを読んだ編集者の方が「うちで小説を書いてみませんか?」と声をかけてくれたからです。一度は断ったのですが、やっぱりやりたい、やってみようと半年後に私から連絡しました。それが河出書房新社の季刊誌「文藝」に載った短編です。その後、中編も1本書きました。それから朝日新聞出版の文芸誌「小説トリッパー」にお声がけいただいて、書いてまとまって1冊になったのが『私は元気がありません』です。

――長井さんの作品は、自転車置き場やコンビニといった日常を舞台に、狂気の世界に入っていく……といった構成がとても新鮮でした。文芸誌の編集者が執筆依頼したのもうなずけます。

 ありがとうございます。これからも書き続けたいと思っています。ただ書くことは非常に労力も時間もかかることなので……書こう書かなきゃと思ってもなかなか書けなかったりもして。締め切りがないとなかなか動けない人間なんです!(笑)

――書く上でのインスピレーションはどこから湧いてくるのでしょうか。

 ふと、湧いてくる感じです。

――それはすごいですね。リサーチとかネタさがしとかしているのかと思いました。『私は元気がありません』に入っている短編「万引きの国」という作品がすごく衝撃的だったのですが。ネタばらしになってしまいますが、「犯罪がきっかけで恋に堕(お)ちる」というけっこう背徳的といいますか、なかなかないシチュエーションのお話です。あれもふと沸いてきたんですか?

 ありがとうございます。「万引きの国」は、「駄目とわかっているけど好きになってしまう」ということを表現したい、という思いから書き始めました。加えて、ある時、夫(俳優の亀島一徳さん)と「暴力はよくないことだけど、人を殴るときと、恋愛しているときのアドレナリンって同じなんじゃないか」というような雑談をしたこともあって。私の場合「この場面(シーン)を書きたい」から、書き始めることがほとんどです。

――影響を受けた作家、好きな作家はいらっしゃるんでしょうか。

「ハリー・ポッター」シリーズが大好きでした。ファンタジーから入って、次に舞城王太郎さんにはまりました。もっと舞城王太郎さんの本を読みたくて文芸誌を読むようになって。高校生になると村上龍さん、金原ひとみさんを好きになって、今は村田沙耶香さんも好きです。小説だけじゃなくて戯曲を読むのも好きです。

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