なぜ強盗をする先が“グレー”ではなく、一般人が増えたのか。
石田被告は、2022年から首都圏を中心に連続で起きた、指示役「ルフィ」らによる強盗事件がきっかけになった、とみている。
「オレオレ詐欺などは世間で知れ渡り、警戒心が強くなったのでなかなか成功しない。グレーなところを叩くにも数が限られている。一般人でお金がある家を狙った方が簡単に一攫千金を得られる」
筆者が2023年末に取材した半グレ集団の関係者は、
「襲う先リスト、いわゆる闇名簿が出回っている。そこには住所から電話番号、家族構成などが詳細に書かれている」
と語っていた。
「ルフィ」「徳川家康」などのアカウント名で呼び合う指示役
そして、「秘匿性の高いアプリを使うことで、指示役は捕まりにくい」とも。
石田被告によると、指示役はお互いを”アカウント名”で呼び合っている。アカウント名とは、秘匿性の高いチャットアプリに登録されたアカウントの名前で、「ルフィ」や「徳川家康」といったものだ。
「指示役同士もお互いの名前を呼ばないし、明かさないことが多い。誰かが逮捕されて、警察にチンコロ(密告)されたら困るから。実行役との会話でも当然、アカウント名で呼び合う」
裏社会でアカウント名を名乗ったら、それを使い続けることがほとんどだという。
「案件が変わるたびに呼ぶ名前を変えていたら混乱するから」
と石田被告は説明し、こう続けた。
「実行役が捕まって、20日間という短い(勾留)期間での取り調べで、警察が指示役に辿り着くことはできない。指示役は、闇バイトで集めた実行役とは絶対に会わないし、テレグラムの解析もその短時間では終わらないと聞いている。まあ、実行役は使い捨てということ。そして指示役のうえにも、さらに指示する役がいて、大きな反社の組織がある」
関東を中心に頻発している強盗事件だが、今後については、
「これからは1都3県(神奈川、千葉、埼玉)以外で起きると思う。都内は監視カメラが多くあって、実行役がすぐ捕まってしまう。闇バイトという言葉も広まっているし、これからは実行役が集まらないという懸念がある。そのため、襲う先を首都圏以外にして、捕まるリスクを下げて実行役を募り始めると思う。今後も闇バイトを使った強盗事件がなくなることはない」
と語った。
石田被告に、刑が確定し服役したとしたら、その後どうするのか聞いてみた。
「出てきても多分、暴力団との関係性は消えない。踏み込んでしまったこの世界からはもう戻れない」
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)