首都圏で相次ぐ連続強盗事件。一般人の家が即席で集められた「闇バイト」らに襲われ、金品を強奪され、そして命を奪われた。実行役は次々と逮捕されたが、指示役は依然として捕まった様子はない。指示役とは何者で、なぜ捕まらないのか。強盗事件を何度も繰り返し、闇バイトを指揮する実行役として加わった事件で逮捕され、現在、勾留中の被告から、闇バイトや指示役の実態を聞いた。
【独自入手】176万225件--。闇名簿には氏名や住所、電話番号、生年月日も書かれている
東京都葛飾区にある東京拘置所。ここに強盗事件の実行役だった人物が勾留されている。石田悠太=仮名=被告、24歳。強盗の罪などで起訴され、一審で懲役7年の実刑判決を受けたが、控訴している。
「闇バイトに一度足を突っ込んだら、もう逃げられない。逃げようとすれば、どんな目に遭うかわからない」
拘置所の面会室で、石田被告は筆者にそう語った。
石田被告が起こした強盗事件を説明する前に、それまでの石田被告の生い立ちについて触れておく。
東北地方出身の石田被告は、小学校時代に「家が貧乏」という理由でいじめられていたが、高学年になるころにはいじめる側に。中学から高校にかけて本格的にグレはじめ、高校を中退すると窃盗グループなどをつくり、犯罪に手を染めるようになっていったという。
東北地方から関東地方に移動しての犯行
暴力団事務所に出入りする先輩と付き合うようにもなり、その後は「覚せい剤以外のクスリはほとんどすべて」(石田被告)に手を出し、買うカネがなくなると窃盗、恐喝、強盗、おやじ狩りとなんでもやった。
1年半ほど少年院で過ごし、出た後は現場作業員などの仕事をしたが、悪い先輩らとの縁は切れず、再び罪を犯して2度目の少年院に。それ以降はその先輩にカネを“上納”しなければならないなど「普通の生活はあきらめた」(石田被告)。定職にはつかず、犯罪行為を繰り返すようになったという。
今回裁判になっている強盗事件は2022年、関東地方の70代女性宅に別の男と2人で押し入り、女性に刃物を見せて脅し、拘束したうえで現金約200万円を奪ったというもの。車などを用意して運転した男も含め、計3人による強盗事件だった。石田被告はこの犯行の実行役で、現場での指示役でもあった。石田被告以外の2人は、X(旧ツイッター)で「闇バイト」などと検索して応募してきた当時23歳の男とその友人だった。石田被告は地元の東北地方から“遠征”しての犯行だったという。