石田被告は以前からそれまでも強盗を繰り返してきた。ただ、いずれもクスリの売人や特殊詐欺グループなど“グレー”な人物をターゲットにしてきたという。
「犯罪で得たカネだから、奪っても被害届を出されない。だから捕まらない。数えきれないほどやってきた」
関東地方での強盗事件については、こう振り返った。
「ある日、『2億円の案件がある』とその先輩から話があったんです。脱税したカネで被害届は出せないと聞いていて、いつものグレー案件かと思っていました。まさか一般人の家とは思わなかったです」
石田被告によると、闇バイトがからんだ強盗事件では、実行役に指示をする指示役、その指示役に「強盗案件」を振る人物、そしてその人物を動かしている組織があるという。組織は、暴力団のほか、半グレ集団や中国人マフィアなどのケースもあるという。
今回は、強盗案件を振ってきたのが先輩で、その先輩自らがXで闇バイトを募ったと石田被告は話した。
「Xではなんでも集まりますよ。クスリや偽造身分証、闇バイト人員まで。犯罪の倉庫です」
手口は昨今多発している事件と同じ。Xで募集をかけたあと、秘匿性の高いチャットアプリ「テレグラム」「シグナル」を使ってやりとりをする。足が付かないようにするためだ。
「この件だけは勝負しろ」と先輩に言われ
ただ、石田被告は今回の事件での募集に「違和感を感じた」という。
「グレーな相手に叩き(強盗)に入るときは、自分のようなベテランの“叩き専門部隊”を使うのですが、このときはXで募集した即席の人材だった。一般人を狙ったら被害届を出されて、実行役は警察の捜査ですぐ捕まってしまう」
捕まる可能性が高いとわかっていて、それでも実行役から外れることはできなかったのだろうか?
「その先輩がつながっている暴力団は武闘派としてすごく有名で、先輩からは『この件だけは勝負しろ』と詰められました。逃げようとすれば、リンチでもなんでもする。平気で一般の民家を襲う指示を出す連中です。正直、何をされるかわからない。やらなければならなかった。ただ、自分はこれまで億単位の大きな案件をこなしたことがなく、実績を作りたいという思いも正直あった。どのみち逃げられなかった」
しかし、強盗に入った女性宅に2億円などなかった。指示役の見当違いの案件だった。犯行後、被害女性が110番通報し、警察は捜査を開始。運転役を含め3人は、数カ月後に逮捕された。