選手と強い信頼関係を築いているロバーツ監督。だからこそチームの勝利のために言うべきことは言う(写真:AP/アフロ)
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 世界一の座をかけてドジャースとヤンキースが激突。気になるワールドシリーズのゆくえだが、頂上決戦に導いたデーブ・ロバーツ監督の選手への姿勢にも注目したい。AERA 2024年11月4日号より。

【写真】「58本塁打、144打点で本塁打と打点で両リーグトップに立ったヤンキースの主砲アーロン・ジャッジ」はこちら

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 米国のメディアで物議を醸した場面があった。メッツに6-12で敗れたナ・リーグ優勝決定シリーズの5戦目だった。ドジャース・大谷翔平は初回に右前打を放ち、続くベッツの二塁打でドジャースは無死二、三塁と先制の好機を作った。メッツは二遊間が前進守備を敷かなかったが、テオスカー・ヘルナンデスの遊ゴロで三塁走者の大谷は本塁突入せず。後続の打者が倒れて無得点に終わると、その裏にメッツに3点を先制されて試合の主導権を奪われた。ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は試合後の会見で、「翔平はスタートしなければいけない状況だったが、固まってしまったようだ。言い訳できない。メッツが最初のイニングを切り抜けて、その後に勢いをつけることができた部分もあると思う」と大谷の状況判断に苦言を呈した。

 ロバーツ監督の発言は大きな反響を呼んだ。「あれは大谷の走塁ミス」と同調する意見があれば、「後続にフリーマンや強打者が控えていたし、遊ゴロの打球も強かった。遊撃のフランシスコ・リンドーアがゴロをさばいた後に目で大谷の動きを牽制していたし、あれで走塁ミスと断罪するのは酷だ」と大谷を擁護する声も。ドジャースを取材する現地の記者は、「様々な意見があると思うがこれがドジャースです」と力説する。

頂上決戦のゆくえは

「大谷がスーパースターであろうと、ロバーツ監督はチームのプラスにならないプレーと判断したら苦言を呈する。今年のシーズン中にも『スイングが少し大きすぎる』と指摘したことがありますし、『翔平はもっと投手に球数を投げさせないと』と発言したこともありました。ロバーツ監督は大谷の貢献度は認めていますし、大好きな選手です。でもチームの勝利のために言うべきことは言う。ロバーツ監督は大谷だけでなく、ムーキー・ベッツやフレディ・フリーマンなどスター選手にも苦言を呈しています。エンゼルスとの大きな違いはここです。強い信頼関係で結びついているからこそ、実績に関係なく勝つための役割を求める厳しさがある」

 ヤンキースとの頂上決戦は両軍の中心選手である大谷、アーロン・ジャッジの活躍が勝敗を大きく左右することになる。ただ、キーマンは2人だけではない。先発の山本由伸がヤンキースの強力打線を封じ込めるか。メッツとのリーグ優勝決定シリーズでMVPに輝いたトミー・エドマンのようなシンデレラボーイが出てくれば勢いがつく。一つのミスでシリーズの流れが大きく変わる可能性もある。最後まで目が離せない戦いが続きそうだ。(ライター・今川秀悟)

AERA 2024年11月4日号より抜粋