【社会学者】下地ローレンス吉孝さん(37):Shimoji Lawrence Yoshitaka/日本におけるミックスルーツの差別などを研究。沖縄と米国のクォーター。著書に『「混血」と「日本人」 ─ハーフ・ダブル・ミックスの社会史─』など(写真:本人提供)

 社会構造にある色々な問題をしっかり解決していくことで、ハーフミックスだけでなく、みんなが生きやすい社会になっていく。日本は差別を禁止する法律もなく、人権機関もないので、いろんな差別が野放しになっていますが、社会の中で問題だと言われていることは、法律やルールを作ってしっかり対策することが大事だと思います。

 女性が消費されるような広告は掲載しないこと。人を見た目で判断しないこと。当たり前と思うかもしれませんが、見た目や名前で外国人と思われ、入社試験を受けられなかったり、不動産を借りられなかったり、銀行口座を開けなかったりする人も少なくありません。あと文部科学省は差別にあたる校則を廃止すること。こういったことがまずできることとして考えられます。

市川:おっしゃる通りですね。

下地:もう一つ、日本のあらゆる調査で、ミックスルーツの人がどうなのかが調べられていないので、ぜひ調査項目に加えてほしい。ミックスルーツの人が日本に何人いるのかも正確には分かっておらず、貧困家庭、自殺率や補導される人数、メンタルヘルス、少年院にいる割合など、きちんとしたデータが必要です。データがないと、実態が把握できないので。

市川:数字があれば、困っていることに声があげやすくもなりますね。例えば、私が現在暮らしているカナダだと、就職面接で雇用主が個人のアイデンティティーや年齢、家族構成等について質問することは違法なんです。もし聞かれたら回答を断ることができるし、その場で言えなければ第三者機関もある。それでも完璧ではないのですが、声をあげやすくはなっています。人権に関する法規制と、この社会に生きる私たちが、意図せずお互いを傷つけていることへの意識をもつことと、両面から変えていくしかないんだろうなと思います。

(構成/編集部・大川恵実)

AERA 2024年10月28日号より抜粋

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