日本版マゼラン登場
再び、「マゼラン・ファンド」の話に戻ろう。実は、同ファンドの運用実績に連動する「マゼラン・米国成長株ファンド」が日本国内で今年9月に設定され、新NISAの成長投資枠の対象になっている。この新ファンドが投資対象とするのは、米国市場に上場する「フィデリティ・マゼラン・ETF」。名称からも想像できるように、「マゼラン・ファンド」と同じ戦略で運用されているETF(上場投資信託)だ。機械的にETFを買い付けるので、その分だけ運用の手間(コスト)も軽減される。その結果、「マゼラン・米国成長株ファンド」の実質的な信託報酬は1%を切っており、アクティブファンドの中では非常に割安な設定。現時点で「マゼラン・米国成長株ファンド」を取り扱うのはSBI証券のみである。
一方、投資信託の評価機関であるウエルスアドバイザーのファンドアナリスト・武石謙作さんは次のようにアドバイスする。
「利益がすべて非課税扱いとなるNISAのメリットは、やはりリターンが高くなるほど発揮されます。投資に費やす時間的な余裕があるなど比較的リスクを取りやすく、大きな収益を期待したい人なら、成長投資枠でアクティブファンドに目を向けるのも一考です」
優秀なアクティブファンドを炙り出すため、武石さんが定めた複数の条件を満たすものを抽出したのが上の表だ。
「1年・3年・5年・10年におけるトータルリターンがいずれも同じカテゴリー(分類)内で上位ランク30%以内に入っているものを抽出しています」
日本株ファンド、先進国株ファンドにおいてスクリーニングしたところ、どちらもほとんどは、ウエルスアドバイザーが施したレーティング(星の数による総合評価)が高いものだった。
無論、あくまで過去の運用実績に基づく選定で、将来を約束したものではない。だが、長く安定したリターンを獲得してきたことは、重要な判断材料の一つだ。
「併せて、目論見書や運用報告書で投資戦略や具体的な組み入れ銘柄もチェックしておくことが大事。リターンを目減りさせる信託報酬も注視すべきポイントですし、継続的に資金が流入していることも大事。繰り上げ償還(運用停止)のリスクを考慮し、純資産残高10億円以上に達していることも前提条件にしたい」(武石さん)
(金融ジャーナリスト・大西洋平)
※AERA 2024年10月21日号