『枕草子』は見聞きしたことや心に浮かんだことなどを思いのままに書いた随筆や日記で構成され、長短約300の文章からなる。書かれた時期は定かではないが、1001(長保3)年ごろにはだいたい完成していたのではないかと考えられている。
四季についての感想から始まり、
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる(春は明け方がよい。だんだんとあたりが白くなっていく山ぎわの空が少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいているのがよい)」
という書き出しに、「夏は夜」「秋は夕暮れ」「冬はつとめて(早朝)」と続いていく。
他にも清少納言は、「チュッチュと呼ぶと寄ってくる子スズメ」や「大きくない公卿の子が、立派な着物を着せられて歩き回る様子」「あやしていたら寝てしまった赤ちゃん」などを「うつくしきもの(かわいいもの)」として描き、「小さいものは全部かわいい」と描いている。
「にくきもの(しゃくにさわるもの)」は、「急いでいるときにやってきて長話をする客」や「眠い時に顔のあたりを飛び回る蚊」「話をするとき、出しゃばって先回りをする人」で、「夜の雷」や「隣に泥棒が入ったとき」「近所の火事」を「おそろしい」と記した。
「ありがたきもの(めったにないもの)」として「しゅうと(妻の父)に褒められる婿」「しゅうとめ(夫の母)に可愛がられる嫁」「女同士の友達で最後まで仲良くいられる人」などを挙げるあたりは、平安時代と現代が地続きであることを感じさせる。
(構成 生活・文化編集部)