有罪判決の事務局長とは「仕事したこともない」
裏金事件では、安倍派の事務局長兼会計責任者である松本淳一郎被告に対して、9月30日に有罪判決が言い渡された。松本事務局長は世耕氏がかつて勤務していたNTTの先輩で、政治の素人だったが世耕氏の紹介で安倍派の事務局長になった。
松本事務局長の判決では、その責任は重いとしつつも、
〈収支報告書の虚偽記載の前提となるノルマ超過分の処理については清和研(安倍派)会長や幹部の判断に従わざるを得ない立場にあり、被告人自身の権限には限界があった〉
とも述べられ、裏金のキックバックには、安倍派の幹部に重大な責任があると指摘している。
松本事務局長との関係について会見で問われた世耕氏は、
「会社時代の先輩だったというだけで一緒に仕事もしたことありません。年に1回会うくらいの関係。派閥の事務局長が急に辞めることになって、その後任を会長が探しておられたので、私が候補者の1人としてご紹介をした」
とだけ述べ、松本事務局長への気配りもなく、裏金事件に幕引きをしたい心境が透けてみえた。
「これは戦争だ。なんでもやる」
世耕氏の会見について、和歌山2区のある自民党県議は憤慨する。
「石破首相が裏金事件のために衆院選でご苦労をされているのに、世耕氏は衆院くら替えだという。自民党にどれだけ世話になったのかわかっているのか。まさに反党行為だ」
二階氏の後援会幹部に聞くと、
「二階氏の父、俊博氏は裏金事件で責任をとり、潔く政界引退。一方で裏金事件の中核の安倍派幹部だった世耕氏は、参院議員で給料を最後まで受け取り、衆院にくら替え。まさに和歌山の恥だ。どんなことがあっても、世耕氏を蹴落とさねばならない」
と怒りをあらわにし、こう宣言した。
「これは戦争だ。法に触れない限り、使える手はなんでもやる。世耕氏を徹底的にやっつけて、勝つ」
世耕氏の記者会見後、田辺市の町をまわると、二階氏と世耕氏のポスターが並んで貼られていた家もあった。世耕氏が記者会見前に開催した後援会の臨時集会に来ていた有権者は、複雑な心境を話してくれた。
「和歌山2区では衆院は二階氏、参院は世耕氏と書くのがお決まりだった。それが、今度の衆院選では、どちらか1人に絞れという。今日、私が来たのは、世耕さんが裏金事件で自民党をクビになって行き場がなく、かわいそうやという気持ちがあったから。それと二階家、伸康氏は世襲という点ですね。でも、うちの家族は、『裏金はあかん、二階氏に入れるのがスジ』とケンカになっている。後援会の集まりには、世耕さんに同情してる、という人が割といたが、どちらを応援するか決めかねて、周囲の目もあるので、私のように家族代表で来たという人もいました」