子どもたちはSCHOOL"S"に通うことができるし、オンラインでつながることもできる(写真:広島県教委提供)

教員も試行錯誤

 着任して5年目の福嶋一彦校長は言う。

「国際バカロレア独特の学びだと思います。私の教職経験の中で、この学校の子どもの伸び率が最も大きいと感じています」

 技術の授業で、他の学校は本棚を作ることがあるだろう。この学校では、子どもたちが教員に「今、何が必要ですか?」とヒアリングに来る。職員室の傘立てを作った生徒もいる。作った後は、感想をヒアリングして、次に生かす。福嶋校長は語る。

「島には、おしゃれをして繰り出す街はありません。だからか、子どもたちは外部の刺激を欲しています。自主的にコンテストにチャレンジしています」

 県内の科学オリンピックで1位になったり、オーストラリアの大学で科学の授業が受けられる文部科学省のプログラムに2人選ばれて招待でオーストラリアに行ったという。

 正直なところ、教員もかなり試行錯誤をしていると福嶋校長。

「教員は大変だと思います。例えば、歴史の授業で教員が『このとき、こんな出来事があったよね』『これの影響はないのかな?』と巧みなヒントを与える工夫をしていますし、生徒の方もアカデミックな質問をする子もいます。教員は考え込むというより、子どもと一緒に楽しそうにしています。この学校が目指すべき学びのモデルになることが大きな役割の一つだと思っています」

女性管理職の多さ

 広島大学大学院の草原和博教授(教科教育、教師教育)は叡智学園をこう評価する。

「教育の機会均等の理念からすると、特定の学校の子どもだけが利益を享受する課題はありますが、幸い公立学校の教員には異動があります。叡智学園での経験は、異動後に県内他校の子どもの学びに還元されます」

 広島県では他にも教育改革が成果を上げている。

 2024年、都道府県版ジェンダー・ギャップ指数の教育分野で、全国1位は広島県だ。公立学校の女性管理職の割合は全国で20%台だが、広島県は段違いに多い。23年度、広島県の公立学校(県立学校、広島市立以外の公立学校など)の校長に女性が占める割合は31.3%。教頭は45.1%にも上り、女性が半分近くもいる。

「教職員人事異動方針に管理職への女性の任用を積極的に推進することを明記し、能力と実績を踏まえて優秀な人材の登用を推進してきたところです」(県教委教職員課)

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