「西船橋駅は犯行がしやすい」と知れ渡っている
2階を歩くと、柱などの遮蔽(しゃへい)物や 曲がり角が多く、全体が見渡せない入り組んだつくりになっている。 武蔵野線ホームへのエスカレーターに向かう通路には、数段の小さな階段がある場所がある。
「曲がり角と遮蔽物が多く、さらに、段差があることでその先が見通しづらくなっています。『確実に逃げる』ことを考えた場合、これほど姿をくらましやすい構造はありません。逆に見渡しやすい構造の駅では、そう簡単に犯行には及びません」(出口さん)
さらに出口さんは、「品定め」のしやすさにも言及する。
駅の2階で、先の武蔵野線のエスカレーターへとつながる場所には、洋菓子店や総菜店、千葉県の地場産品などを販売する店が立ち並ぶ一画がある。そのそばには男女のトイレがある。
人の流れが多い中でも、ゆっくり歩いて商品を眺めたり、柱のそばに立ってトイレに行った相手を待っている人が複数いた。この状況が盗撮犯にとっては好都合なのだという。
「おそらく、駅の中での待ち合わせも多いのでしょう。盗撮犯は人流を観察し、狙いを定めた女性の後についていくのですが、品定めしようと盗撮犯が立っていても、ここなら不自然に見えません」(出口さん)
ターミナル駅でありながら、駅前には、若者がわざわざ駅を降りて集まるような商業施設はなく、この駅を目指してやってくる人は多くはない。移動することだけが目的の駅では、油断が生じやすくなってしまうのだと出口さんは話す。
日々、盗撮場所を物色している盗撮犯たちにも「西船橋駅は犯行がしやすい場所だととっくに知れ渡っているだろう」(出口さん)という。当然、警察のマークも厳しいはずだ。
にもかかわらず、なぜ盗撮犯は同じ駅で犯行を繰り返すのか。法務省に長く勤務し、拘置所で数多くの犯罪者の心理分析に当たってきた出口さんはこう指摘する。