巨人・馬場皐輔(左)とオリックス・鈴木博志(右)(写真提供・読売ジャイアンツ/オリックス・バファローズ)
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 出場機会に恵まれない選手たちの救済を目的に、2022年オフに初めて導入された制度が「現役ドラフト」だ。2023年シーズンは、大竹耕太郎(ソフトバンク阪神)が先発ローテの一角として日本一に貢献し、細川成也(DeNA→中日)が24本塁打を放ってブレイクを果たした。ただ、その一方で指名された12人中6人が移籍後1年で戦力外通告(うち2名は育成で再契約)を受けるという事実もあった。果たして、導入2年目の今季はどうだったのだろうか。(文中の成績はすべて10月3日終了時点)

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 最もブレイクしたのが、水谷瞬(ソフトバンク→日本ハム)だ。身長193センチの右打ちの外野手。島根の石見智翠館高から2018年秋のドラフト5位指名でソフトバンクに入団した“未完の大器”は、プロ数年間は故障と不振に悩む日々が続いた後、2023年シーズンにようやく“兆し”を見せたが、分厚い選手層もあって1軍未出場のままプロ5年目を終えた。しかし、現役ドラフトで日本ハムに加わった今季は、4月11日に1軍初出場でプロ初安打&初打点をマークすると、5月末から始まった交流戦で潜在能力が開花した。

 連日の快音劇で交流戦歴代最高打率.438(3本塁打、13打点)をマークしてMVPに輝いた。その勢いはさすがに最後までは続かなかったが、オールスターにプラスワン投票で出場したことに加え、ペナントレースではここまで95試合に出場して打率.290(321打数93安打)、9本塁打、39打点、4盗塁という数字を残してクライマックスシリーズ(CS)進出に貢献した。何より年齢もまだ23歳と若く、来季以降さらなる飛躍が期待されている。

 前年の現役ドラフトでは12人中6人が投手だったが、第2回となった2023年オフの現役ドラフトは12人中9人が投手を占めた。その中で最も飛躍したのが、長谷川威展(日本ハム→ソフトバンク)だろう。

 長谷川はキレのあるスライダーを武器とするサウスポー。高校時代は在籍した花咲徳栄高が夏の甲子園を制した中でベンチ外だったが、金沢学院大で頭角を現し、2021年のドラフトで日本ハムから6位指名を受けてプロ入りした。そして2年間で1軍登板通算11試合のみという状況から、現役ドラフト経て加わったソフトバンクでは貴重な中継ぎ左腕として31試合に登板し、4勝0敗5ホールド、防御率2.52の好成績を残している。9月28日の古巣・日本ハム戦で水谷にプロ初被弾を許す“数奇な巡り合わせ”はあったが、それでもリーグ優勝を味わったことを含めても充実のシーズンを過ごしたと言える。

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