木村さんからは芝居どうこうのアドバイスはなく、むしろすごく自由にさせていただいたんですが、例えば、お皿の並べかたひとつ取ってもカメラから見るとどう映っているかとか、料理人にとってどういうことか、みたいなことをいろいろと教えていただきましたね。

 起こるドラマももちろんですけど、料理も美しいものがいっぱい出てくるので、単純に視覚的な感動もある。まだ僕も完成形は見ていませんが、とても贅沢な時間になる気がしています」

最大の魅力は「生感」

「お芝居はずっと大事にしたいですね。舞台をコンスタントにやっていきたいなっていう思いはすごくあります。映像ももちろんめちゃくちゃ興味ありますし、みなさんに役者としてのイメージがつくぐらいに、いいよねって言ってもらえるような存在になりたい」

 そう語る正門が、いま最も強く感じる芝居の魅力は「生感」。

「その日その日、みんなで100パーセントのものを作って、お客さんにどう届けていくか。そのライブ感が、やっぱり舞台やっていていちばん楽しいですね。毎日違うもんやと思ってやっているので。

 1作品目(舞台「染、色」/21年)のときは、毎回ちゃんと同じことを丁寧に演じなきゃって思っていたんですけど、演出の瀬戸山(美咲)さんから、全然そんなことなくていい、その日のライブ感、ハラハラドキドキが見たい、という話があって。そこで、あれしなきゃこれしなきゃみたいな考えは捨てたし、そこからさらにお芝居が楽しくなった」

 今回のPARCO劇場での主演は、「俺も20代でできるとは思ってなかった」と言うが、これまでの芝居や、向き合う姿勢が評価されたからこそだろう。

「そうだとうれしいですね。いつかシアターコクーンにも立ってみたい。もちろん有名な小屋は全部立ちたいし、下北沢の本多劇場とかも出てみたいです。小劇場のあの感じ、好きですね」

 役柄としても、アイドルとしても、いくつもの顔を見せる。小劇場の舞台から、Aぇ! groupの夢として挙げた国立競技場でのライブステージまで、この先に広がる景色は無限だ。(編集部・伏見美雪)

AERA 2024年10月7日号

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