AERAアンケートには「更年期=老化のイメージがあり、話すのがはばかられる雰囲気がある」との声もあった
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 ほてりや発汗、関節の痛み、そして気分の落ち込み……。さまざまな症状があらわれ日常生活に支障をきたすこともある女性の更年期。仕事との両立に悩み人も多い。女性ホルモンに人生を振り回されないためにはどうしたらいいのか。AERA 2024年10月7日号より。

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 メーカーに勤務する千葉県在住の女性(59)は45~46歳ごろから体調を崩しがちになり、体がだるくてなかなか起き上がれなくなった。フレックス勤務のため、普段はなんとか時間をずらして出社できていたが、定期的にある棚卸しの日に集合時間に間に合わず、上司から呼び出されて叱責されたという。

 当時は「忙しいから体調が悪いのかな」と考えており、市販のサプリメントを飲むなどしてやり過ごしていた。しかし上司からの叱責がトラウマになり、「この仕事に関わりたくない」と思うように。リーダー格の仕事を打診されたが不安が拭えず、辞退した。

 その後、月経周期が不規則になって婦人科へ。急に月経が始まることがあるため、いつも黒っぽい洋服を着るなどして対処していたという。漢方薬を処方され、緩やかに改善していった。

 更年期を抜けたいま、当時を振り返ると「もっと早く病院に行けばよかったのかも」と感じる。昇進のタイミングを逃してしまったのではないか、との思いもある。更年期の症状で悩んでいる人には「ひとりで抱え込まず、誰かに相談して」と伝えたいという。

 京都大学医学部附属病院産科婦人科の江川美保助教は「不規則な性器出血を、更年期にあらわれやすいただの生理不順だと思っていても、異常な出血の原因になる別の病気が潜んでいる可能性もある。自分の現在地を知るという点で定期的な検診を」と呼びかける。

「自分の現在地」が分かれば、生活改善や治療などの方針が立てやすくなる。更年期に関する正しい知識を得て、「自分をケアしたり必要な治療を受けたりするために、会社や周囲に理解と協力を求めるリクエストをしてほしい」と江川助教は話す。

「更年期というのは試練の時でもあるけど、自分の体は自分のものだという意識をもって、『自分にとって何がストレスになっているのか』『本当の自分は何をしたいのだろうか』と問い直す機会でもある。それまでの人生を総括して、その後のより心地よい生活に備えるという点ではピンチはチャンスです」

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通院時間の捻出も悩み