条約の締結も議会の承認が必要だが、実際には大統領の方針を議会も追認するケースが多い。このように外交面では主導権を発揮できることが、「大統領の権力は絶大だ」というイメージを私たちにもたらしているといえる。
大統領選で選ぶのは「選挙人」

大統領を選ぶための選挙は、4年に1度。民主党と共和党のそれぞれが大統領候補を決めるために、各州において予備選挙か党員集会を実施するところからスタートする。
予備選挙とは党員による投票(共和党では党員以外の投票を認める州もある)で、党員集会は党員同士の話し合いで大統領候補を絞り込むというもの。予備選挙と党員集会のどちらを採用するかは州ごとに異なる。ただしここで選ばれるのは、大統領候補者ではなく代議員である。この代議員が、その後実施される全国党大会で大統領候補を決めるための投票を行い、両党の候補者が出そろうことになる。
大統領選では、本選挙も大統領本人ではなく、州ごとに選挙人を選ぶ形になっている。各州の選挙人の数は、人口比率によって決まる。選挙人の総数は538人で、このうちの過半数をとった候補者が大統領に選出される。
ほとんどの州では、投票の結果、得票数の多かった候補がすべての選挙人を獲得する勝者総取り方式を採用している。そのため選挙が大混戦になった場合、総得票数は下回っていたのに、選挙人を多く獲得したことにより勝利する逆転現象が起きることがある。
識字率が低かった当時の制度

実際、トランプ氏(共和党)とヒラリー・クリントン氏(民主党)が争った2016年の大統領選では、得票数ではクリントン氏がトランプ氏を260万票以上も上回ったが、獲得した選挙人の数ではトランプ氏の306人がクリントン氏の232人を上回り、トランプ氏が勝利した。
このように、大統領選が選挙人を選ぶ「間接選挙」になっているのは、建国当時のアメリカは識字率が低かったため、まずは読み書きができて政治的な判断力も備えた選挙人を選び、その選挙人が大統領を選ぶという制度にしたものが、現在も続いているためである。
(構成 生活・文化編集部 塩澤 功)
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