ホワイトハウスは初代ワシントンの代から建設が始まり、1800年に完成。米英戦争のときに米軍の焼き打ちによって焼失するが、のちに再建された
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 日本時間で2024年10月2日午前、アメリカ大統領選に向けた2回目のテレビ討論がニューヨークで始まった。選挙結果にも大きな影響を与えるとされるテレビ討論。米CNNテレビの世論調査では、9月11日(アメリカでは10日)の1回目のテレビ討論では、民主党のカマラ・ハリス氏が共和党のドナルド・トランプ氏を上回る評価を得たとされるが、両党の副大統領候補が登場する2回目はどうなるのか。

 注目の討論会への理解を深めるため、池上彰氏が監修した『時系列×テーマ別だから一冊でわかる アメリカ史』(かみゆ歴史編集部編)を引用する形で、アメリカにおいて大統領はどんな権限を持つのか、なぜ直接選挙ではなく選挙人を選ぶ「間接選挙」なのかについて、おさらいしておきたい。

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 米大統領は1789年に就任した初代ワシントン以降、バイデン大統領までで46代となる。米大統領というと絶大な権力を持つというイメージがあるが、現実には独裁政治が行われないように、大統領の権限についてはかなりの制限が設けられている。

大統領は法案を提出できない

 まず、立法権は議会のみにあるため、大統領には法律案を提出する権利はない。大統領は一般教書などの教書を通じて議会に立法を促すが、議会は必ずしも方針に沿った法案を作成するとは限らない。また、大統領は議会が議決した法案を拒否することはできるが、議会が3分の2以上の賛成で再議決すれば、法案は成立する。

 一方で大統領には、「大統領令」という行政命令によって、議会の承認を得ずに、政策を実行することが認められている。しかし大統領令の内容が憲法や法律に違反すると裁判所が判断すれば、無効になることもあり得る。

 そんな中で大統領が大きな権力をふるっているのが、外交面だ。大統領は軍の最高司令官ではあるが、宣戦布告の決定権は、本来は議会が持っている。しかし戦争のような非常時には迅速な判断が求められるため、ベトナム戦争などの多くの戦争が大統領によって始められた。

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