俳優の仕事も小説も、自分ではない人物の感情を表すところは共通している。
「小説はその人物になりきって書いています。演じる仕事をしてきたことが、すごく強みになっていると思います」
執筆は自宅のリビングルームで。食事の時間になるとパソコンを移動させる。書斎もあるが、テレビの音がするくらいのほうが落ち着ける。
週に1回、ピラティスで体を整え、シーズンオフでも阪神タイガースのことを考えている。書評の仕事も多く、年間200冊以上の本を読む。
「自分が小説を書いているときは、人の作品は読まないという作家もいます。私はそうはいかないので、人の本をどんどん読んでいるんですけど、文体が影響を受けることはないですね。とても真似できないんですよ。自分が書くものは、自分の書いたものにしかならない、ということがよくわかりました」
静かな筆致で、家族の形、罪とは何かなど、いくつもの問いを投げかけてくれる。
(ライター・仲宇佐ゆり)
※AERA 2024年10月7日号