ガザから退避してきたメンバー

《2023年11月3日~11月14日の日記から》

 カイロのホテルで、戦闘が始まってから26日間を空爆下のガザで過ごし、退避してきたばかりの白根麻衣子さんに会った。

 オペレーションチームからはガザから退避してきたメンバーとは接触しないようにと言われていた。大変な思いをして逃げてきたメンバーにとって、これからガザに入るチームがあるという事実が余計なストレスを与えるのではないか、という配慮からだった。ただ、国境なき医師団日本の会長としても、体制的な問題や改善点があるならば、聞きたいと思った。白根さんは会ってお話することを了承してくれた。白根さんはガザでの状況や経験、そして国境なき医師団としてするべきこと、改善点、力になってくれた在エジプト日本大使館の人たちのことなど、いろいろ話してくれた。

「ガザに向けて出発を待つチーム。しかしこの日も途中の地点から先には進めなかった=2023年11月9日(写真 国境なき医師団提供)

 カイロでは毎日のように、荷造りをしてアパートをチェックアウトして車に乗り込んで出発するが、検問所を通る許可を得られずに引き返す、という日々。だんだんと時間だけが過ぎていく。みんなガザに一刻でも早く入りたいのに入れない。でも毎日少しずつガザの国境には近づいていて、11月9日にはラファ検問所から約60キロのアリーシュという小さな町までたどり着くことができた。ここまで来られたのも大ごとだった。ただここからもまた許可待ちの日々が続いた。日記にも《明日こそは!!!》と何回も書いていた。

 募集が来た時は、すぐにガザに入れる予定で、11月中旬頃までには活動を終えて帰る予定だったが、すでに11月の中旬なのにガザに入れてもいない。11月末に予定していた学会や、12月上旬の重要な会議もキャンセルするしかない、と覚悟した。ただ、12月中旬からの病院の勤務はさすがに休めない。もともと今年は私はクリスマスお留守番働き組でたくさん連続シフトが入っている。クリスマスに休暇を取る同僚がたくさんいるので交代要員はいない。10月中旬から1カ月間カイロでガザ入りを待っていたチームメンバーも数人おり、彼らのエジプトのビザが切れそうになっていた。そのため一度振り出しに戻るかもと言われた。もうガザに居られる残りの日にちも少なくなってきたのであきらめて帰ろうかと心の準備をし始めた11月14日、最後の最後にダメ元で突撃で行ってみたラファ検問所をついに通過することができた。

長い間待機して、ようやくラファ検問所を通過し、ガザに入れた。写真はパスポートの入国スタンプ=2023年11月14日(写真 中嶋さん提供)

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