昨年10月7日、イスラム組織ハマスによる攻撃への報復として、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃が始まって1年。いまも攻撃は続き、これまでに4万人を超える犠牲者が出ている。さらに、食糧不足や衛生面の悪化など人びとの生活状況は深刻だ。昨年10月の攻撃後に届いた派遣要請に応じ、11~12月にガザに入った国境なき医師団(MSF)日本の会長で救急医・麻酔科医の中嶋優子さんは、帰任後も取材や講演等で現地の状況を証言し、停戦を訴え続けている。当時の日記をもとに、全10回の連載で現地の状況を伝える。
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10月13日、イスラエルがガザへの攻撃を始めて7日目。アメリカの病院で勤務しながらもガザの状況は気になっていた。国境なき医師団(MSF)のパリのオペレーショナルセンターからメールが届いた。
「ガザに緊急対応するために、できるだけ早く出発できる緊急派遣チームの人員を探している」
外科医、整形外科医、麻酔科医を募集しているという。
メールを読んですぐ直感的に「行くしかない」と思った。
それまで海外派遣活動に7回参加してきたが、それらはすべて前もって病院勤務を外し、休暇を確保して行っていた。このような緊急プロジェクトの募集は以前もあったけれども、すでに病院勤務予定が入っており職場のみんなに負担をかけてしまうのでこれまでは受けてこなかった。今回も、病院勤務も詰まっているし、学会での講演もあるし、理事会、ダイビング、家族旅行の予定もありスケジュールいっぱいだったけれども、全部投げ捨ててでも「絶対行く」と秒で決めていた。
危うくすぐさま募集メールに返信をするところだったが、夫には「形だけでも」、パリに返事をする前に伝えなければ、と思いとどまった。
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《2023年10月13日の日記》
速攻で決断
全然行くことに迷いはないけど、心配性のライアンにどう伝えるか
今回はちゃんと了承を得てからパリに返事しようと思う
お風呂につかっているとライアンがやってきて、いつものように「何か要る?」と聞いてきた
「パリからガザに行かないかっていう募集が来てるんだけど……」と言ったら
「あーーー」みたいな表情で、その瞬間これは行けると確信した
案の定「どうせ行くんでしょ」と了承してくれた
やったーーーー
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