あんな出来事があった、こんな話題があった…と記事で振り返る「あのとき」。一昨年の10月ごろに、多く読まれていた記事を紹介します(この記事は2022年10月2日に「AERA dot.」で掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
【写真】「サウナ―」を公言している人気のイケメン俳優はこの人
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空前のサウナブーム。「ととのう」快感を求める愛好家が増える一方で、人によっては「疲れた」「翌日がだるい」というマイナスの意見もある。疲労の専門医によると、快感を得られたとしても、実は脳や体にはとても大きな負担がかかっているため、心臓や脳の疾患リスクが増大する危険もあるという。サウナ好きな筆者には耳が痛い話だが、「気持ちいい」だけではないサウナの「リスク」を聞いてみた。
高温のサウナで汗をたっぷりかき、冷たい水風呂へ。ほてりを冷やしてからは外気浴。イスなどに腰かけてぼーっとリラックス。サウナ好きにとって、この「ととのう」状態は、何よりも心地よい時間である。
サウナ大国であるフィンランドの大学などの研究論文によれば、サウナに入る頻度が高い人は、それほど入らない人よりも健康長寿で心臓疾患や認知症のリスクが低くなる、との結果が示唆されたという。気持ち良くて、健康にもプラスに作用するなんて最高ではないか。
だが、疲労の専門家で「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身医師は、この論文に疑問を呈する。
「私もこの論文を読みましたが、『サウナに入る頻度が高いから健康』と解釈できる一方で、『健康な人でないとサウナには頻繁に入れない、だからこの結果が出た』という読み方もできるんです。日本人も体調不良や病気なのにサウナに入る人はそうそういませんよね」
梶本医師はサウナの健康効果について否定的で、むしろ危険だと訴える立場を取る。その理由をこう解説する。
「高温の空間で大量に汗をかくため、脱水症状や熱中症をおこしやすくなります。脳温度が上昇し自律神経がオーバーヒートすると、血圧や心拍、体温などの調節機能が低下し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが生じます。そんな状態で水風呂に入ることは、心臓発作のリスクをさらに高めることになります」
そして、「サウナは百害あって一利なし……せめて一利ならあるかもしれない、というくらいの認識です」と続ける。