@cosmeを運営するアイスタイルも、2024年6月期の売上は561億円とずっと増収で成長はしているのだが、しかしその成長はゆるやかだ。一方の化粧品業界は、たとえば業界一位の資生堂の売上の推移をみても、2000年度の売上が、5952億円だったのが、凹凸はありながらも、漸増し、2023年12月期の売上は9730億円となっている。

 吉松が語る。

「化粧品業界は2000年当時で、総売上が2兆円あまり、そのうち宣伝広告費に3000億円以上も使っていた。つまり売上高に占める宣伝費の割合が2割と、1%前後だった食品や自動車と比べても、コミュニケーションにかかるコストがもっとも高い業界だったんです。インターネットのクチコミサイトを立ち上げれば、マーケティングコストは大幅に下げられる。10パーセントとれたら300億円になる、と思って始めたんです」

 クチコミサイトは、他の通販サイトにあるような、「梱包が崩れていた」等の本質的ではないクチコミを削除し、生活者にとってのクチコミを掲載するようにすることで、クチコミ自体も幾何級数的に増えていった。

 サイトオープンの一年後にはクチコミをもとにしたベストコスメランキングを発表するようになる。

「しかし、ベストコスメで選ばれた化粧品と、実際の売れ行きの相関性がまったくとれなかったんですよ。@cosmeに広告を出しても、まったく売れないよ、ということで当初の目論見であった広告事業の伸びは鈍かった」

 なぜ、クチコミと、実際の販売の相関がとれないのか? その理由に、化粧品会社側が、まずテレビなどのマス媒体で大展開する商品を決め、その予算にしたがって、売上を予測する。その仕組みにあったという。

「つまり、テレビなどの旧マス四媒体で大展開するときめた商品は、最初から多く生産をし、その予算にしたがって、販促費を問屋や販売店に支払う。そうすると、その商品がドラッグストアのいちばんいい位置におかれるようになる」

 そのことがわかって、吉松は、リアル店舗を出す必要があると感じて第一号店を出したのが、2007年3月。

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