それでも、恐ろしいほどのスピードでブランド毀損が進んでいる。相川社長によれば「1日当たりの国内受注は半減」しており、国内ユーザーの風当たりは強い。国内事業の機会損失、顧客や日産自動車への損害賠償費用など、業績への打撃は計り知れない。

 皮肉にも、この不正発覚が国内事業の大リストラへ発展することが確実視されている。

●不正発覚により水島製作所の閉鎖は避けられない

 年間販売台数が100万台そこそこの自動車メーカーが生き残るにはどうすべきなのか──。来年4月から始まる中期経営計画の策定に向けて、三菱自経営陣は、議論を重ねてきたところだった。小粒ながら個性を発揮しているスズキ、マツダ、富士重工業などのライバル会社を徹底的に研究した。

 そこで導き出された結論は、強みに経営資源を集中すること。強みとは、市場で言えば、タイやインドネシアなどの東南アジアマーケット。車種で言えば、「アウトランダー」に代表されるSUVやプラグインハイブリッド車である。

 三菱自は売上高の8割強を海外で稼いでおり、国内の営業赤字を海外で補填している状況だ。そして、赤字の元凶が、燃費偽装が発覚した軽自動車事業である。

 そのため、不祥事が明るみに出る前から、「軽自動車事業からの撤退は既定路線となっていた」と複数の三菱自関係者が証言する。

 27日の決算記者会見では、相川社長は「撤退は考えていない」と否定したものの、国内雇用やサプライヤーへの影響を考えてやりにくかった痛みを伴うリストラが、未曽有の経営危機に直面したことでむしろ進めやすくなった側面は否定できない。

 また、中長期的な軽自動車規格の廃止をにらんで、自社生産の態度を決めかねていた日産だが、ここまで燃費偽装問題が大ごとになれば、三菱自との提携解消に踏み切らざるを得ない。日産が自社生産に踏み切るのは時間の問題だ。

 となれば、最終的には、軽自動車の主力工場である水島製作所の閉鎖も視野に入ってくる。

 現時点では、三菱自とくみしてくれる自動車メーカーのパートナーを探すのは難しく、三菱商事の自動車事業の「メーカー担当」となる道しか残されていない。

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼