脳を若く保つためには
高齢者でも運動すべき
睡眠不足
米国では、睡眠不足だと脳の新陳代謝が落ち、疲労物質が蓄積されるために認知症発生リスクも高いという調査結果があります。睡眠時間は7時間必要だと言われています。
恥ずかしながら、わたしはこの年齢になってもまだまだ守れていません。深夜までオペをして2~3時間寝たあとに、朝5時半に起きてまた夜まで働くという日もしばしばあります。10年間くらいはそれが3日間続くことが3カ月に一度はあったので、やはり週末はダウンしていました。まったく脳によくない人生を歩んできたと反省をしています。
なかなか眠れないという方は、15~30分程度昼寝をしたり、眠る30分前にお風呂に入ると、一度上がった体温が下がって入眠しやすくなります。
運動不足
1990年代から、継続的な運動習慣が認知症の予防に有効であることが示されてきました。しかし最近、運動の認知機能改善効果が明らかでなかったという大規模な研究結果も発表されました。
ただし、この研究内でも高齢者に対しては有意な改善効果が報告されていて、脳を若く保つために高齢者であっても運動すべきだという結論が導かれています。
認知症が一気に進行する典型的な例でよくあるのは、足を骨折してから歩かなくなったというケースです。1日30分程度歩くのでもかまいません。大脳血流を上げるいちばん簡単な方法です。
過剰な運動はフリーラジカルを増やすので適度な運動で十分です。外に出るのが億劫な人は、後述する運動も試してみてください。また、脳の血流を物理的に上げるためには逆立ちも顕著に効果があります。できる人は毎日1分でもしてみるといいかもしれません。無理なく毎日の生活に習慣として取り入れることを目標としましょう。
検査
ここまで脳に悪い生活習慣について述べてきました。今現在、脳がどのような状態かを知るために、脳ドックの受診をお勧めします。
脳が萎縮する前には血流が落ちることがわかっていますし、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドたんぱく質を見つけるPET検査も進歩しています。とくに65歳以上でまだ脳ドックを受けたことのない人は、必ず一度は検査をしていただきたいです。
血管が詰まったり、破れたりすることで脳卒中により神経細胞が破壊されて、脳機能が失われて認知症症状が出る場合は急激に進行します。
一方で脳のゴミと呼ばれるアミロイドたんぱく質が溜まることで、認知症が10~15年かけて穏やかに進行することがわかっています。どちらも注意したい疾患です。