「朝日のような夕日をつれて 2024」(撮影/田中亜紀)

 ハイテンションにしてスピーディな言葉の洪水。しかもキレキレの体の動き。効果音や挿入される音楽が入るタイミングは、若かりしつかこうへいの舞台を髣髴とさせ、それが現在の中屋敷法仁まで受け継がれているのかと思った。

 言葉の乱反射、言葉の万華鏡に巻き込まれながら、僕は公演サイトに記された言葉「淋しさは愛に似ている」「理解は別れに似ている」「連帯は孤独に似ている」の意味を探し続けた。そしてそれらは爆笑の渦のところどころに顔を出し、刹那的に僕の熱を冷ましてくれた。

 終演後、玉置玲央を楽屋に訪ねた。

「僕以外の演者はこの演目が初めてなんです。初演時には全員生まれていなかった。鴻上さんは笑いのツボをわかっていて、このセリフを投げてみろ、絶対、ウケるから、と演出してくれて」

「朝日のような夕日をつれて」は劇作家鴻上尚史がこしらえた大きな器である。その器に「今」の言葉をぶち込んで、演者を鍛え、アップデートし続けている。

 開演時、赤いスニーカーを履いた鴻上さんは紀伊國屋ホールの入口に立って、訪れる客に挨拶をしていた。

 その原点に、下北で見たフライヤーを配る玲央の姿を思い出し、小劇場の系譜はこうして綿々と受け継がれているのだと気づいた。
(文・延江 浩)

紀伊國屋ホール開場60周年記念公演 KOKAMI@network vol.20
「朝日のような夕日をつれて 2024」
【作・演出】鴻上尚史【出演】玉置玲央 一色洋平 稲葉友 安西慎太郎 小松準弥
東京:2024年8月11日(日)〜9月1日(日) 紀伊國屋ホール
大阪:2024年9月6日(金)~8日(日) サンケイホールブリーゼ
DVD予約受付中
https://www.thirdstage.com/knet/asahi2024/

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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