TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽や映画、演劇とともに社会を語る連載「RADIO PAPA」。今回は紀伊國屋ホール開場60周年記念公演「朝日のような夕日をつれて 2024」について。

「朝日のような夕日をつれて 2024」(撮影/田中亜紀)
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 ドラマ、朗読、ドキュメンタリーと玉置玲央には一頃集中的にラジオに出演してもらった。柔らかく、澄んでいて、それでいて芯のある彼の声はリスナーの心にすっと入って異次元に連れて行ってくれる。そしてその多くが何らかの賞を獲得することができた。

 今年も舞台「リア王」やNHK大河ドラマなど華々しい活躍だが、僕は、いつだったか、彼の所属する劇団「柿喰う客」下北沢公演の際、自ら往来に出て声を嗄らすようにフライヤーを配っていた姿を思い出す。

 ほんとに演劇が好きなのだと思った。そして世の中は玲央を放っておかないとも。そして、事実、その通りになっている。

 彼の芝居は欠かさず観ているが、この夏は「朝日のような夕日をつれて 2024」を堪能した。

 言わずと知れた鴻上尚史さん率いる「第三舞台」の代表作である。旗揚げは1981年5月15日。43年前、早稲田大学大隈記念講堂裏の特設テント。

 新しいおもちゃを開発すべく玩具会社「立花トーイ」の男5人の奮闘ぶりを描くストーリーだが、その下敷きには不条理劇のシンボル、サミュエル・ベケット「ゴドーを待ちながら」が隠されているという。

「朝日のような夕日をつれて」はレジェンダリーな演目だが、ようやく見ることができた(紀伊國屋ホール開場60周年記念公演)。

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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