アチーブメント社の社員旅行では、夜に社長や役員陣の部屋に社員が集まり、未来を語りあった

「社員旅行が嫌」=「会社が嫌」?

 社員旅行を実現したい企業と旅行会社のマッチングを行うWebサイト「社内旅行net」によると、今年の企業からの問い合わせ件数は、コロナ禍前の水準に戻っているという。同サイト編集部の石幡晴美さんは、「リモートワークが広がり飲み会離れが進んだことで、社員旅行の価値が見直されつつあるのでは?」と話す。

「昔は社員旅行への参加は半強制のムードがありましたが、今は団体行動に抵抗を感じる社員をどう取り込むか、企業側も歩み寄っています。若い世代に納得感のあるSDGsをテーマに電動自転車を使ったエコツーリズムを取り入れたり、寝る時はビジネスホテルの個室を用意したり、各社知恵を絞っています。『社員旅行はオワコン』と言われることもありますが、宴会でお酒を飲まされて嫌な思いをする……というかつての姿とはちがった形で、今後も続いていく気がします」(石幡さん)

 とはいえ、注意すべき点もある。前出のアチーブメント社員・張さんはこう指摘する。

「嫌がる社員を無理に参加させるのは、病気の根本を治療せず、痛み止めを飲んでいるのと同じ状態です。『社員旅行が嫌』は『会社が嫌』の裏返しかもしれない。これまで社員間の“人間どうしの付き合い”を大切にしてきたのかを振り返り、組織のあり方を見直す必要があると思います」

 令和版に“アップデート”された社員旅行であれば、また企業文化として復活する日が来るかもしれない。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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